具体的にいくつかの菌について述べます。

腸炎ビブリオ:魚介類を摂取しておこることが多く、夏に多く発生します。症状は激しいうえ腹部痛を伴うことが多く、下痢、発熱、嘔気・嘔吐が見られます。潜伏期間は8~24時間です。真水や酸に弱く、3%前後の食塩を含む食品の中で増殖しやすいと言われています。

サルモネラ菌:鶏卵や鶏肉、生のレバーを摂取して起こることが多く、症状は嘔気・嘔吐で始まることが多いとされています。潜伏期間は菌の種類(サルモネラは何種類か菌があります)によって異なりますが、6~48時間です。肉や卵を75℃以上で1分間以上加熱することにより感染を防げます。

病原性大腸菌:加工食品や水耕野菜の摂取で起こります。井戸水の中にも菌が生息することがあります。病原性大腸菌には何種類もありますが、その中の腸管出血性大腸菌はベロ毒素という毒素が大腸の血管壁を壊し、血便を生じることがあります。また溶血性尿毒症性症候群や脳症を発症することもあります。潜伏期間は1~数日です。加熱が不十分な食肉や内臓、汚染された生野菜、浅漬け、水などから感染するので、食品の保存、調理器具などの消毒、焼き肉の時の生肉用トングやはしにも気をつけ、体内に菌が入り込まないように注意する必要があります。

キャンピロバクター:家畜や家禽類の腸管内にいるために鶏肉や生肉の摂取で感染します。症状は、発熱、頭痛、下痢、腹痛などです。潜伏期間は1~7日。乾燥に弱く、十分な加熱調理で死滅します。

つらい食中毒の症状(写真:写真AC)

黄色ブドウ球菌:乳・乳製品(牛乳・クリームなど)や肉・ハムなどの畜産加工品、穀類とその加工品(握り飯、弁当)、魚肉練り製品や生和菓子の摂取で起こります。調理をした人の手指の化膿巣、糞便、鼻汁などで汚染された食品を摂取することで発症することもあります。症状は嘔気・嘔吐で始まることが多く、下痢や腹痛を伴うこともあります。潜伏期間は1~6時間(平均3時間)と早いことが特徴です。毒素型なので、毒素を不活化することが必要ですが、100℃30分間の加熱でも毒素が消失しないことが知られています。

ウェルシュ菌:酸素がないところを好み、熱に強い芽胞をつくります。摂取後小腸で毒素が産生されて下痢などの症状を起こします。肉類、魚肉、野菜の煮物など食べる日の前日など少し前に加熱調理し、そのまま室温で放置された食品から感染することがあります。症状は比較的軽いことが多いと言われています。潜伏期間は6~18時間です。

ボツリヌス菌:悪心、嘔吐のほかにめまいや頭痛、その他の神経症状の見られることがよくあります。時に重篤な状態になることがあります。潜伏期間は18時間前後です。肉類、魚肉のほか、酸素のない状態になっているびん詰めや缶詰、レトルト食品などの保存食品が原因になることがあると言われています。

診断

通常は便培養により菌の分離、同定を行います。出血性大腸菌の場合は分離された菌の生化学的同定、血清型の検査、ベロ毒素試験などを行い診断します。