現在、最も話題となっているのは新型コロナウイルス(COVID-19)による感染症であり、これを取り上げるべきかもしれませんが、この感染症は毎日新しい情報が報告され、まだ確定したものが多くないため、今回はあえて他の感染症を取り上げることにしました。
1.はじめに
溶連菌感染症は、正式名を溶血性連鎖球菌という細菌による感染症です。溶血性連鎖球菌(以後、溶連菌)の中にはいくつもの種類がありますが、今回は主に溶連菌感染症の中でも最も一般的なA群β溶血性連鎖球菌による感染症についてお話します。
症状
溶連菌感染症の症状としては咽頭痛、発熱、発疹が最も多く見られます。咽頭だけでなく扁桃にも炎症を起こし、扁桃腺炎を起こすこともあります。喉を診察すると、咽頭や扁桃が真っ赤になっています。
扁桃は化膿し、黄色っぽい滲出物で覆われることもあります。EBウイルスやアデノウイルスによる扁桃炎では滲出物は白っぽいことが多いといわれており、熟練した医療者が診ると鑑別できることが多いといわれています。
また、軟口蓋に点状出血や小紅斑が見られることもあります。ただし3歳未満の幼少児では症状や所見に乏しいことも少なくありません。
舌はイチゴ舌が有名ですが、初期は白苔をともともなう白色舌、その後白苔がとれると乳頭が赤くイチゴのつぶつぶのような形状になり、赤いイチゴ舌になります。小児の場合、このほかにイチゴ舌が診られる病気として川崎病があり、しばしば川崎病の鑑別として溶連菌感染症があがります。
発熱は微熱から高熱まで様々です。また小さな比較的赤い丘疹が見られることもあります。この発疹は発熱や咽頭痛の症状が現れた後24時間以内に全身に出現しますが、顔は前額部や頬部が赤くなるのに対して口の周囲に発疹が出ないために白く見えることから口囲蒼白といわれます。また発疹は鼡径部や腕の付け根に、よりはっきり出ることが多いです。発疹は3~4日で消退していき、1週間程度で顔や手足に落屑が生じます。
以前は症状が強い溶連菌感染症は猩紅熱といわれていましたが、近年あまり重症化することがなく、溶連菌感染症という名前で呼ばれることが多いようです。抗菌薬によく反応し治癒しますが、まれに化膿性頸部リンパ節炎や、咽後膿瘍を呈し、リウマチ熱や急性腎炎を併発することが知られています。
なお、潜伏期は2~5日です。
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