このサイズアップ訓練のルールは、活動判断は行うがひとつの固定した戦術や答えなどを決めてしまわないことが前提。理由は答えをたくさん挙げることにより、臨機応変な対応力を向上させることが目的だからだ。

また、延焼方向を知るために旗や木の葉を見て風の方向を判断したことなど、普段気づかないことを現場で生かせるような発見をし、隊員間に与え合うことも重要。現場到着後それぞれがどのように動くかを自動的に判断。双方向的に意見を出しあって活動を合理化し、救命活動や延焼阻止などをスムーズにすることを目的としている。

次のサイズアップ訓練映像は、指令センターへの通報内容の確認や建物構造の判断、応援要請の必要性判断、危険物の有無、呼吸器着装の位置、隊員ごとの消火活動の手順、要救助者の検索優先順位判断などを含んだアドバンス的な内容である。


出典:YouTube/CFD Training /SizeUp Complete Report March 2017

サイズアップ訓練に使うビデオは内部映像資料としてアーカイブ化され、活用することも可能。火災関連の場合は映像や写真を撮影しやすいため、訓練ビデオを作成しやすい。

出典:http://www.commandsafety.com/structural-anatomy/combat-fire-engagement/

重要なのは訓練の進行役のファシリテーター役である。できれば、小隊の中堅的隊員がサイズアップ訓練に用いる映像とコンテンツの作成から関わり、ファシリテーターとしてのポイントを事前につかんでおくこと。

いかがでしたか?

日本の災害事情を考えると、大地震による化学物質関係プラントや燃料所蔵所などの複合大火災を想定した災害対応訓練として、このサイズアップ訓練を採用できるかもしれない。

たとえば、「台風下 (10月頃)の午後9時頃、テロリストが機内警備が十分でない外国籍の航空機をハイジャックして、 石油や高圧ガスのタンクヤードが隣接するコンビナートエリアに墜落させ、強風によって複数のタンクに延焼。近くには工場夜景見学ツアーに来ていた160名の外国人観光客がいるもよう」という複合災害のケースだと検討しなければならない幅が広がり、事前にどのような予防や対策が必要なのかといった、ワークショップを通じて得られる成果物が多そうな気がする。

このシナリオの発想は下記のマニュアルからヒントを得た。

■川崎市に大地震が起きた日/企画・編集/川崎市総務企画局危機管理室
http://www.city.kawasaki.jp/170/cmsfiles/contents/0000083/83589/BousaiEhon.pdf


■川崎臨海部コンビナートの安全対策 ~ コンビナートの災害予防対策・災害応急対策 ~
http://www.city.kawasaki.jp/840/cmsfiles/contents/0000048/48740/_combinato_pamphlet.pdf

それでは、また。


一般社団法人 日本防災教育訓練センター
代表理事 サニー カミヤ
http://irescue.jp

(了)