症状

ノロウイルスによる感染症の症状は主に嘔気・嘔吐、下痢、腹痛です。どちらかというと小児では嘔吐が多く、成人では下痢が多いと言われています。微熱をともなうこともあります。

症状は主に嘔気・嘔吐、下痢、腹痛(写真:写真AC)

潜伏期間は1~2日で、元々他の病気がある人では長引くこともありますが、通常は症状の持続期間は短く、数日以内(平均1~2日)には軽快すると言われています。高齢者では吐瀉物の誤嚥(ごえん)により肺炎などを起こすこともまれにあります。

また、ノロウイルスは不顕性感染といって、感染したにもかかわらず症状がない場合があります。しかし無症状であっても便中にウイルスを排出していることが多く、とくに食品を扱う人は注意が必要です。

診断

ノロウイルスの診断は、便の中のウイルスを検出することで確定できます。その方法にはいくつかあります。

一つは抗原簡易検査(イムノクロマトなど)といって、抗原反応でウイルスの核の蛋白を検出する方法です。これは短時間で判定ができますが、感度は低いと言われています。もう一つはリアルタイムRT-PCR法などを用いてウイルスの遺伝子を同定する方法です。これは感度の高い方法ですが、判定までに時間がかかります。

ノロウイルスの抗原簡易検査は3歳未満と65歳以上、免疫力の低下した患者に対しては保険で検査ができますが、それ以外の人は保険診療では検査できないことになっています。

感染経路、感染力

主な感染経路は経口感染です。感染しているヒトの便や吐瀉物から手などを介して感染する場合や、ノロウイルス感染者の吐瀉物や下痢便の中のノロウイルスを吸い込んで感染する飛沫感染も報告されています。

また、ノロウイルスで汚染された食物を食べることによって感染することもあります。特に牡蛎で感染することは知られています。牡蛎だけでなく、火のよく通っていない2枚貝を食べて感染することもあります。通常は生食用とされている牡蛎でもノロウイルスがいることがあり、感染を起こすことがあります。

なぜ2枚貝での感染が起こり、巻き貝ではほとんどないかというと、2枚貝は海水をこしとって海水中のプランクトンを食べるためです。牡蛎は1日約200リットルの海水をこしとっているとされていますが、ノロウイルスは下水の流れ込む河口付近に多く浮遊しているため、このあたりに棲む2枚貝はノロウイルスを取り込みやすいといわれています。巻き貝は海水を濾過するのではなく、海藻を食べているため体にノロウイルスをため込むことは少ないとされています。

感染した人の便中に排出されたウイルスは、汚水処理場で処理されるはずですが、ウイルス自体が非常に小さいために処理しきれないで河川に流され、最終的に海に流れ出て、牡蠣などの2枚貝に入り込み、それを食べた人が感染するという循環があるとされています。

ノロウイルスは感染力が非常に強いといわれており、ウイルスの数が少なくても感染源になることが、感染がなかなか収束しない原因です。冷凍しても感染力は落ちず、乾燥したままで20日以上は感染力が持続するとされています。

さらにノロウイルスは、一度人の体内に入るとウイルスの排出期間も長いことが知られています。感染後3週間経過しても約25%の人から排出されていますし、長い場合は1カ月以上にわたり排出するとされています。