食材が高騰しても収益を安定させる方法
第11回 市場価格の変動によるリスクへの対応(財務リスク)
株式会社フォーサイツコンサルティング/
執行役員
五十嵐 雅祥
五十嵐 雅祥
(一財)レジリエンス協会幹事。1968年生まれ。外資系投資銀行、保険会社勤務を経て投資ファンド運営会社に参画。国内中堅中小製造業に特化した投資ファンドでのファンドマネジャーとしてM&A業務を手掛ける。2009年より現職。「企業価値を高めるためのリスクマネジメント」のアプローチでコンプライアンス、BCP、内部統制、安全労働衛生、事故防止等のコンサルティングに従事。企業研修をはじめ全国中小企業団体中央会、商工会議所、中小企業大学校等での講師歴多数。
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□事例:食材の高騰に頭を抱える企業
A社は首都圏を中心に、飲食店を多店舗展開している企業です。A社の店舗は、旬の野菜や魚をメインにしたメニューを売りにしており、昨今の食の「健康志向」にも乗って、ここ数年、売り上げを大幅に拡大してきました。
しかしながら、A社の食材の仕入れ担当であるBさんは、今年の国内の状況に頭を抱えています。というのも、災害や天候の不順などが原因となり、野菜や魚といった食材の高騰が続いているからです。今年の夏は梅雨が長引いて日照時間が少なかったため、キュウリやナス、ゴーヤをはじめとする夏野菜が軒並み不作となり、仕入れ価格が例年より2~3倍になったこともありました。秋以降も、長雨による日照不足や相次ぐ台風の接近・上陸などにより、旬野菜の価格の高騰が続いています。特に先日の台風19号によって、さまざまな地域の農作物が被害を被ったのみならず、地域の卸売市場や漁港も甚大な被害を受けてしまい、A社にとって十分な仕入れがままならない状況になってしまいました。
各店舗には、「食材の棚卸を毎日行なって食材ロスを減らすこと」を厳命し、厨房スタッフは着実に実行してくれてはいます。また、通常は仕入れ対象外の規格外野菜などを仕入れ、価格を抑えることを試みてはいますが、それだけで解決するようなレベルではありません。
メニューに使用する食材の量を減らしたり、他の食材での代用を考えたりもしましたが、不正競争防止法や景品表示法に抵触する可能性を指摘されたことや、何よりも贔屓にしてくれているお客様から「味が落ちた」と言われてしまうことを避けたいという理由から、A社はこれまで通りの食材で、これまで通りのメニューを提供し続けることを決めています。
一方、気象庁が発表した11月からの3カ月予報によると、北海道や東北以外では暖冬傾向になる見通しとのことのようで、冬以降もまだまだ、食材の高騰には悩まされそうな気配が感じられます。このままいけば、今期のA社は食材の高騰のために収益が大幅に悪化する見込みです。
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