災害時には、自分の居所をまわりに知らせることが大切。でも「避難時にはしゃべっちゃダメ」!?


長時間にわたって重量物に圧迫されると、重量物をとりのぞいて助けようとすることでかえって死にいたってしまう現象です。クラッシュ症候群対策のため、その場で点滴などの処置をとってもらえれば救命の可能性もあがりますが、大災害の時に点滴できる人が身近にいるとは限りません。一般には、その場で水を飲ませる程度の対処法しかはなく、生存率は高くありません。

「阪神・淡路大震災時、家屋に閉じ込められた16万4千人中の救出方法の割合」(京都大学防災研究所)より作成

何か重たいものに挟まれた、閉じ込められたとなった場合、ほとんどの方は近所の人に助けてもらっています。クラッシュ症候群にならないほど短時間で近所の人に救けてもらうためにホイッスルを使ったり、例え手元になくても手につかんだ木材などをたたいて音を出したりするなど、意識があれば、自分の居場所を知らせる必要があることを知っておきたいですね!

さて、この事をこどもたちに伝える時には注意が必要です。

なぜかというと、園や学校の防災標語がこんなものであることが未だに多いのです。

学校防災標語の例。講演先の小学校で撮影

左の写真のような『おかしもち』のケースや、『おはしも』=「おさない」「はしらない」「しゃべらない」「もどらない」のケースもあります。いずれも、「しゃべらない」事が重視されているのですが・・・

実際に被災後、こどもたちを倒壊家具から救出した園の先生方の話を聞くと、怖さもあって名前を呼びかけても声が出せない子がたくさんいたケースが報告されています。

こどもたちは素直なので、全面禁止になると、大人が想定する以上に一切声をだせなくなる可能性もあります。

最近のこどもたちは、家でも地域でも学校でも大きな声は禁止されています。だからこそ、救助を求める時は大声をだす練習や助けを求める練習の方が必要なのではないでしょうか?同じ考えから防犯訓練については、大声をだすための発声練習が取り入れられています。

最近の子どもは大声を出すのも練習がいる? ※画像はイメージです

そもそもしゃべらないというのは、あまり緊迫感がない避難訓練でジリジリジリと非常ベルがなって、「だるいー」とか「うざいー」とかだらだら無駄なおしゃべりをするケースが多いので、考えられた標語のようにもみえます。

もちろん迅速な避難のためにしゃべっている余裕がないという理由もありえますが、「こっちから煙がでています!」「先生、天井のあの部分が崩れそう!」そんな危険情報があるなら、伝えてもよいのではないでしょうか?

ついでに「はしらない」「かけない」ですが、津波の心配な地域では走ってもぶつからずケガもしない迅速に逃げる訓練をしています。また、少子化ですのでそもそも走ったところで、ぶつかる心配も少ない学校も増えています。

禁止をすると訓練がしやすくなりますが、思考停止になりやすいです。その標語は本当に根拠があるのか、全面禁止よりもするべき行動指針を示すことができないか、それを園や学校、職場ごとに具体的に考えてほしいと講演ではお伝えしています。