ロックフェラー財団100RCに見る街づくりのポイント
自然災害とガバナンス欠如の克服へ
第4回:ローマ(イタリア)
国際大学GLOCOM/
主任研究員・准教授、レジリエントシティ研究ラボ代表
櫻井 美穂子
櫻井 美穂子
ノルウェーにあるUniversity of AgderのDepartment of Information Systems准教授を経て2018年より現職。博士(政策・メディア)。ノルウェーにてヨーロッパ7か国が参加するEU Horizon2020「Smart Mature Resilience」に参画。専門分野は経営情報システム学。特に基礎自治体および地域コミュニティにおけるICT利活用について、レジリエンスをキーワードとして、情報システム学の観点から研究を行っている。Hawaii International Conference on System Sciences (2016)およびITU Kaleidoscope academic conference (2013)にて最優秀論文賞受賞。
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異常気象に悩まされるローマ
今回は、イタリアの首都ローマです。2016年に、就任当時38歳の女性市長が誕生したことでも話題となりました。古代都市として数多くの歴史遺産を抱える一方で、ファッションや文化の中心でもあり、世界中から観光客を惹き付けてやまない都市です。一言でローマといっても、その言葉がカバーする範囲は広く、域内は15の自治区に分かれています。面積にして1285平方キロメートル。岩手県の宮古市とほぼ同程度の面積に、およそ300万人が暮らしています。そのうち66%はキャピタルと呼ばれる中心地に住んでいます。人口は、2014年からほぼ横ばいで大きな増減はありません。1285平方キロメートルの64%が緑地という、緑豊かな土地でもあります。域内の歴史遺産は2万5000を超え、非常に歴史豊かな環境でもあります。
ローマが抱えるチャレンジ
イタリアは日本と同じように、地震大国とのイメージがあるかと思います。ローマでも、実際に過去10年間で大きな地震が2回(うち直近のものは2回の余震を伴った)ありました。意外なのは洪水の多さです。ローマは過去10年間で5回洪水に見舞われています。このほか、大雪、干ばつ、山火事なども発生しています。昨年、ローマが6年ぶりの大雪に見舞われたニュースをご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。普段雪が降らない地域ですから、都市機能が大混乱に陥りました。
夏には猛暑が襲い、洪水リスクを抱えるのは25万人と、近年の異常気象に苦しんでいる都市の一つでもあります。このような背景から、ローマが抱えるショック(短期課題)は、自然災害がメインとなっています。
他の都市と比べて特徴的なのは、ストレス(長期課題)の捉え方です。レジリエント戦略で定義されるストレスは、主にガバナンスの項目が多くなっています。
<ショック>
・地震、洪水、浸水、土砂崩れ
洪水は、川の氾濫のほか、大雨が降った際の排水機能が脆弱なことによる土地の浸水、鉄砲水など様々な原因があります。
<ストレス>
・ ローマ市としての統合プランや行動戦略がない
・ 情報共有や効率的なコミュニケーションの欠如
・ 行政処理のスピードの遅さ
・ 空気・水・土壌汚染
・ ゴミ処理
・ 公共施設やインフラの老朽化
・ “公”概念の欠如
・ 公共交通機関の整備が不十分
・ 移民の増加
・ 観光客の増加
これらストレスに共通するのは、行政内のサイロ化やエコシステムの欠如です。歴史的な背景もあるのですが、ローマ市の行政システムは非常に非効率的であるというのが共通認識としてあります。遺跡が多いため、公共交通機関の整備も困難を極めています。市の中心部では、もう何年も新しい地下鉄敷設工事が続いています。こうした公共交通機関へのアクセスも含めた、人々の生活の質の向上が喫緊の課題です。2017年時点で、ローマ人口の22%にあたる人々がインターネットを一度も使ったことがないというデータもあります。
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