ロックフェラー財団100RCに見る街づくりのポイント
デジタルテックに着目したニューヨークのレジリエント戦略
第11回:ニューヨーク(アメリカ)
国際大学GLOCOM/
主任研究員・准教授、レジリエントシティ研究ラボ代表
櫻井 美穂子
櫻井 美穂子
ノルウェーにあるUniversity of AgderのDepartment of Information Systems准教授を経て2018年より現職。博士(政策・メディア)。ノルウェーにてヨーロッパ7か国が参加するEU Horizon2020「Smart Mature Resilience」に参画。専門分野は経営情報システム学。特に基礎自治体および地域コミュニティにおけるICT利活用について、レジリエンスをキーワードとして、情報システム学の観点から研究を行っている。Hawaii International Conference on System Sciences (2016)およびITU Kaleidoscope academic conference (2013)にて最優秀論文賞受賞。
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今回は、世界の金融、アートの中心地であるニューヨークです。ニューヨーク市は、1625年にニューアムステルダムとして共同集落としての形をスタートさせました。現在は780平方キロメートルの面積に、およそ850万人の人口を抱える巨大都市へと成長しました。ニューヨーク市がレジリエント戦略を策定した背景には、市が2025年に誕生から400年を迎えるに当たり、将来ニューヨークがどのような都市であるべきか、次の世代にどのような都市の形を受け渡せるか、という問題意識がありました。レジリエント戦略は、将来にわたってニューヨーク市が世界のグローバル都市としての役割をけん引するためのロードマップとして作成されました。戦略では、経済成長、公平性、持続可能性、そしてレジリエンスの4つのビジョンが示されています。戦略全体のキーワードは、「OneNYC(New York City)」です。そして全てのビジョンにおいて、デジタルテクノロジーやデジタル産業に着目したアクションを掲げています。
ニューヨークでレジリエント戦略が策定されたのは2015年です。市では2007年と2011年に、環境に優しい街づくりを掲げた都市計画を、2013年にはよりレジリエントにフォーカスした計画を策定しており、今回のレジリエント戦略に至る布石となっています。
ニューヨークが抱えるチャレンジ
①人口増加
2040年には人口が900万人に到達し、65歳以上人口が就学児童の数を超えると予想されています。また人口の約4割を、アメリカ以外で生まれた住民が占めています。同時に、高等教育を受けたアメリカ人の若者たちが、より良い職を求めてニューヨークに流入するトレンドが続いています。
②経済成長
経済成長と聞くと、一見、都市が抱えるチャレンジとは思えませんが、ニューヨークでは、街のキャパシティに見合わないくらい成長が続いていることをチャレンジと捉えているようです。ニューヨーク市内の総生産額は6500億ドル(約68兆円)。経済活動の柱は金融保険と不動産です。これらの職種は市全体の職の12%ですが、総生産額にして38%を占める主要産業となっています。主要産業の成長が、他の職種(小売り、外食、ホームサービスなど)の伸びをけん引しています。フォーチュン500のうち52社がニューヨークに拠点を置く一方で、市のプライベートセクター雇用の半数以上を、従業員100人以下の中小企業が賄っているため、市外からやってくる能力のある若い人々をどのようにこれら中小企業に引き付けるかが課題となっています。
③格差の拡大
過去10年間にわたり、市内の収入格差が広がっています。ニューヨーク市民のおよそ半分が貧困層とされており、その大半をアフリカ系アメリカ人、ラテン系アメリカ人、そしてアジア系アメリカ人が占めています。上記で述べた経済成長の影響で、ニューヨークで暮らすための生活費が高騰しています。アメリカの他の大都市と同様に、住宅供給が追い付かず、ホームレスの数は過去最高を記録しています。
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