欧米では子供だけで留守番をさせるのも、子供だけで町を歩かせるのも児童虐待にあたる可能性が。

日本でも海外でも、子供への肉体的な虐待については、当然ながら法律で処罰されますが、日本人が海外で児童虐待として処罰される例として、「放置する」という問題を忘れてはいけません。

この放置の問題は、欧米諸国では厳格に適用されます。例えば、米国では州、市によって、対象年齢はまちまちですが、一般的に子供だけで留守番をさせる、子供だけで町を歩かせる等の行為は児童虐待に当たり、逮捕・拘留の対象となります。

また、欧州においては、一般的に12歳以下の子供を放置すること(子供だけで留守番をさせる、自動車内で待たせる、学校に行かせる等々)は違法であり、米国同様、逮捕・拘留の対象となります。

そのため、欧米で子供を連れ滞在する際には、「決して子供だけにしない」ことが不可欠となっています。ちなみに、欧米の人が日本で居住した際に最も驚くことの一つが、「親もいない公園等で子供たちだけで遊んでいる」、「子供が1人で電車・バスに乗っている」、「学校に親が送り迎えをしない」とのことです。

米国では児童福祉全般について各州が第一次的責任を負っており、児童虐待についても、それぞれの州で独自の法令及び行政の取組みがなされています。1974年には、連邦レベルでの対応も必要との認識から、「児童虐待の防止及び対処措置法(CAPTA:Child Abuse Prevention and Treatment Act)」が制定され、各州における児童虐待の発見・確認、防止及び対処措置のプログラムが定められました。

その後も、各州に児童虐待を防止する政策を進めるための連邦法が数多く制定されています。ちなみに、各州では、児童の定義はまちまちですが、概ね12歳以下である場合が多い状況です(シカゴがあるイリノイ州では13歳以下、テキサス州は14歳以下を児童としていますが、同年齢以上でも児童として認定される場合も多いことに留意が必要です)。

それでは、実際にどのようなことを注意すべきかを在ナッシュビル日本国総領事館のHPから引用してみました。なお、児童虐待については、米国内の全ての在外日本公館(大使館・総領事館)のHPで「安全の手引き」等で注意喚起していますので、参考にして下さい。

在ナッシュビル総領事館HPより

■某日、小学生の子供を連れた邦人女性が近くのスーパーに買い物に行った。子供が、商品を買ってほしいと言ってねだるので、母親が子供の頭を小突いて叱った。⇒ 他の買い物客が目撃して警察に通報したため、児童虐待容疑で母親が州政府の児童保護局(テネシー州ではDCS:Department of Children’s Serviceと呼ばれる)の取調べを受けた。

■某日、幼稚園に通う少女が、父親と一緒にお風呂に入るのがいやだと幼稚園の作文に書いた。⇒ 幼稚園の先生が、児童虐待(性的暴力)容疑者として父親を州政府の児童保護局に通報し、調査活動が行われた。

■某日、小学生の男子が悪ふざけをしたので父親が注意したら、少年は近くの木に登ったので、父親が少年に対して下りてくるように怒鳴った。⇒ 近所の住民が警察に通報し、父親が児童虐待(心理的威圧)容疑で勾留された。

■某日、乳児をお風呂に入れている写真を近所のドラッグストアで現像に出した。⇒ ドラッグストアが児童に対する虐待容疑で児童保護局に通報し、児童虐待(性的虐待)容疑で調査活動が行われた。

■某日、邦人女性が5歳前後の息子と一緒に外出するため準備していたが、先に準備を済ませた息子が外に出たいと言ったので、先に息子だけを戸外に出させ、待っているように言った。息子は外に出された理由を母親に叱られたものと勘違いし、玄関は施錠されていたため、泣きながらベランダに回り、室内に入れてもらおうと窓を叩いたり、蹴ったりした。このため、慌てて邦人女性が息子を家の中に入れた。⇒ 児童虐待をしていたと近隣住民が勘違いし、警察に通報し、警察官が駆けつけた。警察官に事情を説明したが、児童虐待と判断され、裁判所への出頭命令書が手交された。

■某日、日本人の女性が2歳の子供を連れて車でスーパーに買い物に行った際、食料品2品のみを買うだけなので車の中に子供を残して、約10分、車から離れた。⇒ 通行人女性が警察に通報し、児童放置容疑で邦人女性が警察の取調べを受けた。

■某日、母親が7歳の子供を連れて大型スーパーに買い物に行き、車に戻った際にその店に忘れ物をしたことに気づき、子供を車内に残したまま車から離れた。⇒ 通行人女性が警察に通報し、児童放置容疑で母親が警察の取調べを受けたほか、子供が1ヶ月間、指定の里親に預けられ、親との面会も制限された。

■某日、幼児がいる邦人夫婦が米国人ベビーシッターを雇って、夜、会食に出かけた。⇒ ベビーシッターが、乳児のおむつを替える際にお尻の蒙古班を見つけて、児童虐待と勘違いし、州の児童保護局に通報したため、子供が収容されそうになった。

出典:「米国での生活上の注意事項」
(在ナッシュビル日本国総領事館ホームページ)
http://www.nashville.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/americaseikatsutyuijikou.html

(了)