2019/09/20
危機管理の神髄
米国災害システムの神話
あなたが政府と言うとき、それは具体的に何を意味するのか?
災害に対して責任を持つ者は誰かを理解しようとするには、まずあなたが“政府”と言うとき、それが何を意味しているかを知るべきである。そう思う人もいるのに反して、米国ではわれわれの政府は一つではない。
連邦、州、地方自治体という3つのレベルの政府に加えて、数千の郡、市、町、村の政府があり、その数は3万6000を超える。
その名が示すとおりアメリカ合衆国は州の共和国なので、政府と言えば第一義的にはそれぞれの州政府である。合衆国憲法によって、主権を持つ州は一定の権限と応答責任を連邦政府に委譲することに同意した。しかしそれらの権限と応答責任には災害対応は含まれなかった。
災害の応答責任は連邦政府には委譲されなかったので、責任(所有)は州になければならない。しかし州も災害の責任を負ってはいないということが明らかになった。
地方自治法は州からその下部の政府に権限を付与するというタイプのものである。地方自治法によって、大方の州は災害対応の応答責任を、郡・市・町といった最も人々に近い政府に移転した。それゆえ州は責任を地方自治体の政府に押し付けたのである。
―FEMA長官 ブロック・ロング
すべての災害はローカルであるというのは、全国に3万以上ある自治体政府が災害に対する一義的な応答責任を持つという事実を指すものである。あなたの地方の公選役人はあなたの地方で、中でも最も傷つきやすい市民である貧しい人・病気の人・高齢者・障がい者に何が起きているかを知る必要がある。公選役人は彼らのために、彼らを導き、満たされていないニーズを特定し、それに対処するために倦(う)むことなく働くことを期待されている。
その応答責任は災害が起きたときにも変わらない。実際はさらに重要となる。次の災害の後、停電が何日間も続き、携帯電話が不通となり、倒木があなたの家の前の通りをふさぐとき、あなたと家族は自分たちでその身を守らなければならないかもしれない。
電力会社の人、衛生局の人、郵便配達員さえも、誰も見かけることがなくなると、あなたは「誰の責任なのだ?」と思い始めるだろう。答えは今現在、責任を持つのと同じ人、市長・郡の幹部・市会議員・郡の判事などの公選役人である。
これがわれわれの災害対応システムであり、上手くできている。ときにそれが機能しなくなることがあるのを除けば。その例を見るためには、あまりに昔までさかのぼる必要はない。
(続く)
翻訳:杉野文俊
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
-
-
-
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方