地区防災ガイドを作成

ワークショップの成果物として出来上がったのが、「地区防災ガイド」の冊子版だ(写真1)。これはワークショップに参加した委員のほか、町内会の代表など、有事の際には防災リーダーになる人物や避難所となっている学校に配っている。内容は基本的にはほぼ共通しており、①地区の基本的な考え方、②地区の特性、③平常時の行動、④災害時の行動、⑤実践の5項目が掲載され、最後の実践の項目では周囲の住民に対する「防災意識の普及啓発と防災教育」を促している。もう1つ、内容を絞り込み、住民向けに日頃の備えや避難所マップ、避難経路などを示したカレンダータイプの簡易版も作成した。ワークショップの発案で、家庭で気軽にカレンダーのように見てもらいたいとの思いからだという。こちらは地区内もさらに細分化し、種類を作成し、21全戸に配布しているという(新港地区のみ、企業が対象になるためポスタータイプにしている)。

「みんなで育てる」地区防災計画

「地区防災ガイド」の冊子版は、付け足し可能なファイル形式になっている。今後さらに訓練などを積み重ねることで計画をブラッシュアップし、更に内容を増やすことができるようにするためだ。ワークショップでも「計画を作って終わりではない」という意見が多く出されたという。

昨年からは、全地区を対象に避難所の運営まで含めた訓練も開催している。これもワークショップで話し合ったことで、通常は町内会単位で開かれるものだが、より実践的に避難所単位で開催することにした。例えば、1つの避難所に複数の町内会の住民が集まるのであれば、複数の町内会が合同で訓練を開催することになる。市内に避難所は22カ所あり、すでに12カ所で訓練が開催されている。

「自分たちが作った防災計画なので、非常に住民が愛着を持っています。訓練も自主的に多くの方が参加しています」(笠井氏)。ワークショップの本当の成果物は、こういった地区の絆なのかもしれない。

写真1 住民がワークショップで考え出した「地区防災ガイド」