情報の見える化で課題を解決

危機管理委員がトップを務めるグループ会社では事業別対策本部が設置され、自社の本・支店や拠点の情報だけでなく、担当する他のグループ企業の情報も集めなくてはならない。これまでの連絡手段は電話と無線、ファックス、メール。受け取った被害情報はExcelでまとめていた。集計には向いているExcelだが、ファイルの中身は文字や数字の羅列で、一目で状況を把握するには不向きだった。

各事業別対策本部からの情報を集約する危機管理委員会事務局でも、災害対策本部室でExcelの無機質なマス目を見るのは決して効果的ではなく、何より入力に苦労する。また、地図を使った災害情報の効果的な整理も容易ではなかった。なぜなら対策本部室に備えていた市販の地図ソフトは、あくまでも事前に入力された各グループ会社の拠点を地図上に示し、災害時の連絡に必要な電話番号などを表示させる機能が主で、被害情報を入力し地図上に反映させ、どの地域がどのくらいの被害を受けているのかを可視化するのは道路マップの性質が強いソフトでは決して容易でなかったためだ。またパソコンやソフトが何らかの理由で使用できなくなった場合のために対策本部室の壁には紙の地図を常時用意し、被害状況などを手書きで記入できるようにしていたが、最大の欠点は情報の更新だった。

だからこそTIS株式会社の提供する「Bousaiz」をはじめて見たとき、直感が働いたという。

「まず、被害状況集計表を見たときに自分で作ろうと思っていたものだという印象を受けました。被害程度が一目瞭然でわかるCOP※と同じで、赤、黄、緑で色分けされていてわかりやすい。そして、最大の魅力と感じたのは現場で撮影した写真をいろいろな場所で複数の者が同時にリアルタイムに確認できるという、地図上に写真を掲載できる機能でした。被害状況の把握は簡単ではありませんが、その遅れは意思決定の遅れにつながります。だからこのような情報の見える化が非常に重要だと思います」(後藤氏)。
※COP=CommonOperationalPicture(状況認識の統一図)

迅速な情報収集と一目でわかる状況把握

Bousaizの被害状況集計表には拠点ごとの被害が色別で示される。「死者発生」「負傷者」「保有装備」「火災」「電気」「ガス」「水道」「通信設備」「業務可否」などの確認項目が横に、本社などの拠点が縦に並ぶ。分散している各拠点では、Bousaizを使って事前に設けた基準に従って赤、黄、緑を選び状況を知らせる。災害対策本部ではどこの拠点でどの程度の被害が出ているのか、被害程度が色分けされているおかげで一目でわかる仕組みだ。

「特に多くの情報が急激に入ってくる初動では、混乱して情報整理は難しい。しかし、被害情報集計表の画面を見ればどの拠点の被害が大きいか、色で示してくれる。赤なら重大な被害が出ているから優先して対応する。色の情報がなければ大きな被害を受けて情報すら送れない可能性もある。このようにすぐに状況を把握し、次の手を打てるわけです」(後藤氏)。

Bousaizの被害項目に従っての情報収集のメリットはそれだけではない。情報収集のスピードアップも同時に期待できる。各拠点ではまず、Bousaizの被害項目に答えて第一報を送信すればいい。情報の重要性を考慮し、電話や無線、メールなどで詳細を伝えるのが鈴与流だ。

実は、これまでは初動で詳細な被害情報を求めすぎていたという。初動での報告が細かすぎると緊急性が高く、素早く伝える報告に遅れが生じる可能性も出てくる。それは意思決定の遅れにつながり、対策が後手になりかねない。だからこそ、報告形式の簡素化などの改善を進めてきたが、Bousaizの導入でさらに大きく進歩すると後藤氏は説明する。

「被害情報を送信する側、受け取る側の双方の助けになりました。発災時に電話は通じにくい。各拠点でスマホやタブレットを使って簡単に情報は送れますし、対策本部で見ているBousaizの画面にすぐに反映され、状況把握も早くなる」(後藤氏)。