利根導水事業の主要施設

武蔵水路を改めて説明する。利根川の水を荒川に導くための導水路として埼玉県内に開削された。埼玉県行田市の利根大堰で利根川から取水され、鴻巣市で荒川に注ぐ。全長14.5キロで全体が開水路である。管理者は水資源機構で、今日、東京都水道局の約4割、埼玉県企業局の約8割の給水エリアの水道水を送っている。また、周辺地域の洪水や出水を取り込む役割(内水排除機能)を果たしている。

1967年の武蔵水路の工事完成後、2015年度までに平成の大改築工事(後述)を実施し、これに伴い、一部区間で治水機能を新たに有したことから、2016年に利根川水系に属する一級河川に指定された。

<参考>武蔵水路:位置 埼玉県行田市須加地先~鴻巣市糠田地先
水路形式 コンクリートライニング台形水路
延長 約14.5キロ
最大通水量 毎秒50立方メートル
主な付帯施設 サイホン(6カ所)、樋管、水位調節堰(4カ所)、放流口(4カ所)、水門(2カ所)、排水機場。

利根導水路の他の主な事業を紹介する。

<利根大堰>
利根川を横断する可動堰で、利根川中流部の各用水を合口(ごうぐち)取水し、取水口、樋管、沈砂池(ちんしゃち)を経て、5つの水路に分かれる。武蔵水路、見沼代用水路、埼玉用水路、邑楽(おうら)用水路、行田水路に分かれる。
武蔵水路は、すでに述べたように東京都の水道用水・工業用水・浄化用水と埼玉県の水道用水・工業用水を荒川へ導水する水路。
見沼代用水路は、埼玉県の農業用水・水道用水と東京都の水道用水を導入する水路。
埼玉用水路は、農業用水を羽はにゅうりょう生領用水、葛西用水、稲子用水、古利根用水へ導水する水路。
邑楽用水路は、利根川を横断して左岸へ送水、利根加用水、明和用水、板東用水、北川辺領(きたかわべりょう)用水へ導水する水路。
行田水路は、行田浄水場へ直接導水する水路。

<朝霞浄水場>
荒川から流下した水を浄化し、水道水として都民に給水する施設で、東京都東村山浄水場へ送水する。朝霞浄水場と東村山浄水場の間は、水の状況に合わせて相互に水融通が行われている。