被害報の他に、新たに加わった情報は、ヘリからの空撮画像だ。撮影した被災地の画像を地図上で即座に確認できるようになった。国交省はヘリを8台所有しており、そのうち2台が撮影した映像を衛星通信でリアルタイムに転送できるヘリサットシステムを搭載している。このヘリサットを搭載したヘリが隙間のないように被災地の上空で旋回を繰り返し往復して撮影し、集めた映像をつなぎ合わせた画像がDiMAPSで見られる。映像情報にGPSやカメラの角度情報、ヘリ姿勢情報なども加えたデータを送信し、自動的に広範囲の被災画像が組み上がる。「このようにヘリからの空中撮影写真をリアルタイムで地図化し、一般に公開する試みは世界初ではないでしょうか」と飯島氏は胸を張る。

9月の集中豪雨で鬼怒川が決壊して浸水した常総市の面積は最大で約40㎢だったと発表があったが、この計算にもヘリサットの映像が一部利用されている。ヘリサットが取得した画像をDiMAPS上で時間軸に沿って表示させると、常総市の浸水エリアが鬼怒川決壊で拡大してから、排水によって縮小していく様子が分かる。ヘリサット画像だけでなく通行止めなどの道路情報、土砂災害なども同様に時間軸に合わせて表示させることで被害の変化も確かめられる。「誰もが被害の全体像を把握しやすくなりました」と飯島氏は語る。 

さらに、河川などに設置している監視カメラの映像も地図上に表示されたカメラマークをクリックするだけでウェブ上で見ることができる(一般への公開はしていない)。鬼怒川決壊も、国交省では、監視カメラから状況を確認し、直ちに全国からの支援体制を整えた。現地の職員が撮影した写真なども、そのまま地図上に表示することが可能だ。 

DiMAPSを導入し国交省のオペレーションは大幅に早まったという。「従来は地震が起きると15分で参集して、監視カメラにより被害状況を確認するのに10数分かかっていました。このシステムは地震計が置かれた場所の震度がすぐわかり、被害が大きそうな地点を絞り込み重点的に確認できるようになりました。被害情報の把握が確実にスピードアップしたおかげで対策の検討開始も早まりました」と飯島氏は説明する。 

集約されるのは被害情報だけではない。これまではそれぞれのウェブサイトにばらばらに表示されていた浸水想定地域や土砂災害危険個所などハザードマップなどの情報も併せて表示できる。