広報が連携して謝罪する手もある
3回目 業界慣例の不正が発覚した時
日本リスクマネジャ-&コンサルタント協会副理事長/社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科教授/
広報コンサルタント
石川 慶子
石川 慶子
東京都生まれ。東京女子大学卒。参議院事務局勤務後、1987年より映像制作プロダクションにて、劇場映画やテレビ番組の制作に携わる。1995年から広報PR会社。2003年有限会社シンを設立。危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。企業・官公庁・非営利団体に対し、平時・緊急時の戦略的広報の立案やメディアトレーニング、危機管理マニュアル作成、広報人材育成、外見リスクマネジメント等のコンサルティングを提供。講演活動やマスメディアでのコメント多数。国交省整備局幹部研修、警察監察官研修10年以上実施。広報リスクマネジメント研究会主宰。2024年より社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科教授。
石川 慶子 の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
2017年、2018年は、大手メーカーによる品質データ改ざんなどの不正問題が相次ぎ報道されました。2006年、2007年にも産地偽装、賞味期限改ざんといったことが起こりました。「うちの業界にも、こういう悪い慣例があるな」と思った方は多いのではないでしょうか。今回は、このように業界全体が長年慣習として行ってきたことが突然不正として発覚してしまった時の対応について考えてみましょう。
責任を取って社長が会長に昇格?
M社の事例を追いかけてみましょう。M社は、2017年11月グループ会社で検査記録データの書き換え不正があったことを公表しましたが、翌年2018年2月にも追加で不正が発覚しました。なぜ、不正発覚の連鎖は続いたのでしょうか?
2018年3月28日に公表された特別調査委員会の最終報告書で私が着目したのは、不適切行為の原因・背景事情の項目です。指摘されたのは、先行して発覚していた不正事案(先行事案)をひとごとと考える企業風土です。「そもそも問題がよく分からないので、コンプライアンスといっても何をしてよいか分からない」といった社員のコメントは現場の実態をよく表しているといえます。「いつものようにやっていればいい」といった従来慣行への依拠、先行事案は「ひとごと」という意識、そして、自らの仕事の意味や「製造事業者としてのあるべき行動」を考えずに業務に追われていたことを指摘しています。さらに2018年6月には、本社でも検査記録データの書き換え不正が見つかり、グループ全体で問題製品の出荷先は800件以上になりました。その責任を取って社長は辞任して「会長」になることが発表されましたが、社長が会長になるのは責任を取る形として一般の人にどう見えるでしょうか? 社長が会長になるのは、通常は昇格人事ではないでしょうか。責任を取ったことにはならないのです。ここにM社が不正を繰り返す本当の理由が垣間見えます。どう見えるのか社長には言えない、上司には言えない、リスクを指摘できない企業風土があるということです。
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方