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なんでも流行の最先端を行っときたい!というオシャレな紳士淑女の皆様もこればっかりは流行にのらない方が良いのでは?というのが、毎冬に猛威を振るうインフルエンザの流行ですね。それでも時代の最先端を行くことになってしまった敏感な方、つまりインフルエンザにかかってしまった不運な方は、本当にお気の毒です。

編集部注:「リスク対策.com」本誌2016年1月25日号(Vol.53)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです(2017年1月12日)。

「インフルエンザにかかっても検査も薬も必要ない!?」

驚かれるかもしれませんが、実は本当です。日本の多くの医療機関では流行時期にインフルエンザのような症状があって受診された患者に検査を行い、抗ウイルス薬(タミフルなど)が処方されているでしょう。一時期のマスコミやTV のワイドショー番組の過熱報道の影響か?すっかりインフルエンザにはタミフルが特効薬というイメージが定着しているようです。しかし、世界標準の治療指針では、入院が必要なほどの重症でなければ、リスクのない65 才未満の成人には、検査も治療も必要ないと言われています。

「検査も治療も必要ない」と言うと少しビックリされるかもしれませんが、インフルエンザとはいえ、風邪と同じウイルスによる病気です。放っておいても自然に治る病気(Self Limited Disease)であり、必ず自分の体力で治ってしまう病気なのです(本誌連載「風邪をひいたら「美味しいものを食べて早く寝なさい」というおばあちゃんの話が一番正しい!?」参照)。ゆえに治療方針は、食事や水分を摂って休養を取ることです。ですから、検査をしてインフルエンザの診断がついたところでこの治療方針には変更がありません。だから「検査も必要ない」となるわけです。

治療が必要なのはどんな人?

それはリスク(重症になる危険性やその条件のこと)がある人です。ここで言うリスクとは何でしょうか?

高齢者、ガン患者、身体の抵抗力が弱っている状態、呼吸に関係する問題がある方などです。

日頃から自分の持病についてよく知っておく必要があります。これらの項目に該当がなければ検査も治療も必要ありません。

鼻に綿棒グリグリ…

ちなみにインフルエンザの検査は結構辛い検査だと思います。鼻の奥深くまで長い綿棒を突っ込まれてグリグリ…。痛いし、咳き込むし…。安心してください。もし、鼻水が出るのであればその場で鼻をかみ、ティッシュに付着した鼻水でも検査は可能です。この方がはるかに苦痛は少ないでしょう。

高熱でフラフラ〜、寒い中わざわざ病院へ…

「勤務先から提出するように言われたので…」と言って診断書や病欠の為の証明書などを求められることがあります。しかし、熱が出て辛い時にわざわざ書類のために病院を受診することが必要でしょうか?会社という組織の中でのルールだというのは理解できますが、明らかに医学的には治療として逆のことを患者に強いていることになります。できるだけ早く帰宅させ、栄養、水分を摂り、休養させなければいけません。

企業の担当者としては、社内への感染拡大を懸念されるのでしょうが、高熱が出るなどインフルエンザの可能性があれば、受診を強制するのではなく、その旨を報告してもらい、結果的にインフルエンザでなかったにしても1 週間程度はゆっくり休んでもらうしかありません。インフルエンザに罹患した社員が、「俺は5 日間休んだから大丈夫」といって出勤したら、周辺の方がインフルエンザになった、なんていう経験もあるかもしれませんが、検査そのものが完璧ではありません。

「検査でインフルエンザが出れば休める、出なければ出勤しなければいけない…」、「インフルエンザだったら病欠が◯日、風邪だったら◯日なので…」

これらは全くお勧めしません。検査は万能ではありませんので、検査が陰性でも、たまたまインフルエンザが出なかっただけかもしれません。風邪もインフルエンザも治療方針に違いはないのです。しっかり食事を摂ってゆっくり休むことが大切です。また、風邪もインフルエンザも他人に迷惑がかかる可能性(うつる?)のある病気ですから、あえて人ごみや人前には出るべきではありません。まずは自分のため、相手のため、そして社会のためにしっかりと休みましょう。

ただし、新型インフルエンザが流行した場合は、病原性の強さなど詳しいことがわからず不安も大きいことでしょうから、政府や自治体の指示を聞いて判断するようにしましょう。

患者各位!

あなたが受診した病院の玄関や待合室にこんな貼り紙がしてあったら…。どうか、がっかりしないでください。ちょっとぶっきらぼうに感じるかもしれませんが、実はハートのアツい優秀なドクターがいる、かなりイケてる病院だと思います。

(了)