2019/03/14
講演録

リスク対策.comは12日、東京都千代田区の明治薬科大学剛堂会館ビルで第3回危機管理塾を開催。システム開発などを手がけるクレオの内部統制室リスクマネジメントグループマネージャーの永井勝氏が「BCP(事業継続計画)は本当に回せるのか!? Bousai Continuity Planでいいじゃないか」をテーマに講演した。
永井氏はグループ会社で2002年からITの事業継続管理に取り組み、後に自然災害など他の危機も想定したリスクマネジメント専門部門を設立。現在はクレオ本体でこの分野に取り組んでいる。
永井氏は「BCPと防災分けて考える必要は、個人的ないと思う」とし、防災と事業継続に深い関係があることを説明。事業継続については原因事象と結果事象。両側面から考えるべきだとした。
災害を含めた緊急時に企業は、従業員・家族の安全確保や雇用維持といった社会的責任のほか、顧客や取引先の安全確保や営業再開支援といった社会的信用を守ることも実現しないといけないことを説明。また、近年は災害がらみの訴訟が多く、「過去にあった気象現象は不可抗力として認められにくい。また災害発生前に安全配慮義務を尽くしていても、発災後に責任者の適切な指示がないと安全配慮義務違反になる」と解説。過去の災害を踏まえた防災マニュアルの準備に加え。いざという時にしっかり行動するための教育・訓練の重要性も語った。
「BCPについては被災シナリオ多く作るべき。そしてそこから戦略を考えることが重要」と語る永井氏は、「戦略は最終的なゴールを数値で表すなど明確にし、そのために何をするのか具体化が必要」と述べ、例として被災しても主力製品を3日以内に製造再開という目的を定め、そのためにすべきことを具体化するといった取り組みを説明した。そして、戦略実現のために復旧や代替といった戦略の組み合わせについても説明した。
危機が起こると需給バランスが崩れるが、「需要が変わらないもしくは増えるなら供給し続けるための戦略、需要が減ったもしくはなくなる場合は事業停止・中断のために何をすべきか考えることになるだろう」と永井氏は予測。被害の程度による考え方として「軽微なら早期の復旧戦略でいいが、甚大なら代替、壊滅なら事業転換やリストラの可能性が出てくる。代替戦略の場合は大企業であれば他拠点代替も可能だが、そうでない場合は他社設備を利用するなどの工夫も必要になる」と述べた。
BCPの実現のためには緊急時に行動ができるよう日常的に取り組む従業員教育だけでなく、「被災した従業員が生活を再建し、安全・安心で業務に従事できる状態とすることが必要」と永井氏は説明。平時からの取り組みを通じて安全配慮を尽くし、発災後も社会的責任を果たしながら、従業員が生活を再建し早期復興に取り組めることが重要とした。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
DXを加速するには正しいブレーキが必要だ
2月1日~3月18日は「サイバーセキュリティ月間」。ここでは、企業に押し寄せているデジタルトランスフォーメーション(DX)の波から、セキュリティーのトレンドを考えます。DX 時代のセキュリティーには何が求められるのか、組織はどう対応していくべきか。マクニカ ネットワークスカンパニー バイスプレジデントの星野喬氏に聞きました。
2025/03/09
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/03/05
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/04
-
-
-
トヨタが変えた避難所の物資物流ラストワンマイルはこうして解消した!
能登半島地震では、発災直後から国のプッシュ型による物資支援が開始された。しかし、物資が届いても、その仕分け作業や避難所への発送作業で混乱が生じ、被災者に物資が届くまで時間を要した自治体もある。いわゆる「ラストワンマイル問題」である。こうした中、最大震度7を記録した志賀町では、トヨタ自動車の支援により、避難所への物資支援体制が一気に改善された。トヨタ自動車から現場に投入された人材はわずか5人。日頃から工場などで行っている生産活動の効率化の仕組みを取り入れたことで、物資で溢れかえっていた配送拠点が一変した。
2025/02/22
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方