2019/03/12
講演録
1月24日・東京都中小企業振興公社フォーラムより
当社は大正元年(1912年)4月の創業、今年で108年目を迎える魚肉練製品製造販売業を行う会社です。商品は現在42品目ほどを製造販売しており、宮城名産の笹蒲鉾をはじめ、揚げ蒲鉾、手作り商品も作っています。工場拠点はすべて宮城県石巻市にあり、この工場すべてが被災するというかたちになりました。
石巻市では、1960年のチリ沖で起きた遠地津波と今回の近地津波を混同してしまった結果、心のブレーキがかかって自宅から出ない方が多くおられました。また、震災前のハザードマップでは、昭和三陸地震が津波予測の震源地となっており、仙台湾や石巻湾の津波の浸水高はだいぶ低めに想定されていたことが、3.11からの教訓です。
東日本大震災発生時、私自身も工場にいて50名ほどで籠城していましたが、最大6mの浸水を記録しました。経営陣は各事業所におり、最終的に「全員留まれ」という指示を出したことで、就業中の者は全員無事でした。3日目には、休んでいた社員が釣り船を拾って助けに来てくれて、自力で避難を遂げました。津波が引いた後、ヘドロなど津波の堆積物の除去作業を行い、被災をしたメイン工場ではなく、古くからある本店地区の工場が無事だったことから、4月17日にそちらで製造を再開しました。
東日本大震災からの教訓としては、敷地的にも全部、津波堆積物が集積してひどいことになり、従業員だけでは対応できなかったことから、地元建設会社にチームを作っていただき、最大1日150名体制で津波の堆積物を乾燥させる前に、洗浄消毒を徹底的に行っていただきました。また、大手ゼネコンや全国企業の皆様に、現地調達が困難なものを徹底的に準備していただき、そのおかげで現地の復旧が可能となりました。
もう一つの教訓としては、中小企業ですので全員の面接に参加しており、誰がどこに住んでいるのかを事前に把握していたため、危ない地域に住む者を帰宅させずに残すという判断に迷いませんでした。
- keyword
- 東京都中小企業振興公社
- BCP
- 白謙蒲鉾店
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/17
-
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/12/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方