写真AC ミルクを嫌がる赤ちゃん

熱湯消毒し、振りながら溶き、人肌にさまし、飲ませる

ようやく日本にも液体ミルクが出現しました。わたしは心の底から拍手を送りたいです。あー、日本にもやっと春が来たと。

というのも、私は共働きをしながら2人の子育てをしました。生まれたての子は、昼夜を問わずミルクをせがみます。まさに子育ては昼夜なしの仕事です。翌日学会発表というのに、子どもが一晩中泣きわめいて、こちらが泣きたいぐらいの地獄でした。

地獄の原因の中で最たるものはやはり授乳です。もちろん、母乳が赤ちゃんにとって最良の栄養であることは知っています。母乳には成長に必要な栄養素がバランスよく含まれ、赤ちゃんの体に負担をかけません。さらに、授乳によるスキンシップで赤ちゃんとの絆を深めます。それでも、母乳を赤ちゃんにあげられないこともあるのです。上記のように勤務があると母乳を続けることは難しいです。子どもを連れて勤務はできないからです。

さて授乳ですが、夜中急に泣き出すので哺乳瓶を熱湯消毒し、粉ミルクを計り入れ、振りながら溶き、人肌にさまし、飲ませる。子どもが途中で飲むのを止めたら、じっと待ち、もし催促したら温め直して続きを飲ませる。延々と時間のかかる仕事でした。翌朝は気力も失せ疲れてヘトヘト。働く女性が子育てをするのは命がけです。それ以外にも、ママが体調不良の時はやはり赤ちゃんに母乳をあげることは困難です。

 

避難所におけるミルク問題

やっと日本にも液体ミルクの製造が認可されました。遅すぎませんか? 災害のたびに避難所ではミルクをもらえない乳児が泣きわめいていました。

どんな災害が起こっていたか振り返ってみましょう。2000年代…有珠山噴火、三宅島噴火、鳥取県西部地震、新潟県中越地震、新潟県中越沖地震など。2010年代…東日本大震災、広島土砂災害、熊本地震、九州北部豪雨、西日本豪雨、北海道胆振東部地震など。ライフラインが停止し水も熱もなく、粉ミルクを溶かすことができない。乳児を待たせると泣くので避難所では迷惑がられ、のけ者にされがちでした。外に連れ出し「乳児にお乳を我慢させる」という最悪の事態が多く起こりました。このように災害の多いわが国で、液体ミルクの必要性が高いにもかかわらず、なぜこれほどまで遅れ、幼児が無視され粗末にされ続けてきたのか不思議でなりません。

女性が社会進出するにつれて増える子育てシーンでの困りごとや災害時に起こりがちな困りごとが多いにも関わらず、これらは今まで放置されたままでした。それらのことが今日の少子化の闇に拍車をかける一因になっているとは言えないでしょうか?