2018/12/20
AIブームとリスクのあれこれ
■よりリアルな実験環境を目指して
しかし、実験は実験、あくまで仮想の環境でAIが地震を予知できるとしても、それだけでは十分に喜べないことも確かです。暗闇の中でパッと輝く光はどんなに小さな光でもまぶしく感じるものですが、実際にはどれだけの実現可能性を秘めているのでしょうか。
専門家は、実験室と現実の地震とではさまざまな相違点があることは確かだが、実験環境と似たような系に適用してスケールアップしていけるのではないかと期待しています。そう言えば、アメリカにも日本にひけをとらない危険なエリアがあります。1906年と1989年にサンフランシスコ付近で大地震を引き起こしたサンアンドレアス断層がそれです。また、太平洋岸北西部のカスケード断層も過去に大地震や大津波を発生させています。専門家はこれらの断層で起こる小さな地震が実験室でのシミュレーションに近いことを挙げ、期待の根拠としていると記事は伝えています。
いつどこで地震が起こるのかを音響パターンでとらえるわけですから、もしこのAIが実用化されれば、いろいろと用途が広がるでしょう。狭い国土と急峻な地形を持つ日本の自然環境で、さまざまな崩壊の音のパターンを機械学習に学ばせれば、山崩れや土砂崩れ、火山の噴火、雪崩発生のアラートにも応用できるのではないでしょうか。
AIの特徴である機械学習と高速の計算処理が行えるコンピュータ、膨大なデータセットが三位一体となれば、さしもの偶発的事象の典型である地震も、人類の最大の挑戦の一つであった「予知」に屈する時が来るのかもしれません。今後の展開が楽しみです。
(了)
AIブームとリスクのあれこれの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方