カスタマーセンターのグローバル化の次は、問い合わせの機械化が進みつつあります(出典:写真AC)

■カスタマーサービスの変遷

1990年代半ば、パソコンやソフトウェアが爆発的に普及するようになると、各メーカーは操作方法や故障、トラブルなどの相談や解決を引き受けるカスタマーサービスを充実させるようになりました。また金融機関や通販サイトなどは、商品の説明をしたり、申し込みや問い合わせ、クレームなどを受け付けるコールセンターを設けるようになりました。

当時は正社員やパート社員の人たちがこの業務を担当していたようですが、時間がたつに連れて、これらのサービスを利用していた私たちユーザーはある変化に気づくようになります。それは、電話に出た人の言葉に標準語ではない地方のアクセントやなまりが微妙に混じっていたり、場合によっては外国人ではないかと思える人が対話してくれたりするのです。グローバルにビジネスを展開する米国の大手IT企業などは、早い段階から、人件費の削減や24時間365日のサービス対応にするために、地球の裏側に当たる東南アジアやインド、その他の途上国にこの種のサービス拠点を移していましたから、そのビジネス慣行が国内でも広まったのでしょう。

当時はてっきり東京本社のカスタマーサポートのスタッフに電話をかけているものとばかり思っていたのに、実は北海道や九州在住のスタッフ、あるいは海外の流ちょうな日本語を話す中国人や韓国人スタッフであったわけです。ひとたび電話がつながるとシームレスに応答が始まるので、筆者にとってはちょっとした驚きでした。

カスタマーサポートやコールセンターに限ったことではありませんが、こうした変化の根底には、増え続ける問い合わせや注文に人手で対応し続けることのコストや労力、そして電話がなかなかつながらない顧客やユーザー側のいら立ちを何とか解決できないかという焦りがあったのでしょう。しかしこれからは、AIによってこうした問題は解決に向かうかもしれません。AI自らが人間の声をまねるだけでなく、相手の言葉を理解してその文脈に沿った返答を瞬時に生成し、まったく違和感なく受け答えしてくれるという技術が出てきたからです。