講演する筑波大学システム情報系教授の鈴木氏

巨大災害研究会(会長:兵庫県立大学教授 木村玲欧氏)とレジリエンス研究教育推進コンソーシアム(会長:防災科学技術研究所理事長 寶馨氏)の2024年度合同シンポジウムが2月28日、関西大学梅田キャンパス(大阪市)で開かれた。3回目となる今年度のテーマは「スマートシティと防災 -レジリエントな都市のデザイン」。

基調講演では、筑波大学システム情報系教授の鈴木健嗣氏が「大学・国研連携型スーパーサイエンスシティの挑戦」と題して登壇。つくば市が「スーパーシティ型国家戦略特区」に指定され、大学や国の研究機関・企業と協働しながら「スマートシティ」の実装を進めている経緯を説明した。人口増加が続くつくば市で、移動や医療、防災など重点分野を掲げ「インクルーシブテクノロジーによる誰一人取り残さない」社会の実現を目指していると語った。防災や危機管理への期待も強調された。たとえば「水素燃料電池バス」を活用した災害時の電力供給や医療対応の事例では「人工呼吸器の充電はもちろん、体育館などの避難所の一部照明にも活用でき、災害時の過酷な環境を緩和する手段になる」と紹介。また、ドローンを使った緊急物資や血液検体の輸送、新しいモビリティ(パーソナルモビリティや自動運転バス)を用いた避難支援など、先端技術を防災に生かす取り組みが紹介された。さらに「異なるセクターや人をつなぐデータ連携の基盤構築が、災害リスク低減や危機時の迅速な対応を可能にする」との指摘もあった。

当日はまた、東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター長・教授で福島国際研究教育機構 (F-REI) 客員上席研究員の関谷直也氏が「東日本大震災とその教訓から考える大規模災害対策」と題して、富山市 防災危機管理課主幹の児島誠氏が「令和6年能登半島地震を経験した富山市の取り組み紹介〜コンパクトシティと防災〜」と題して、それぞれ話題提供した。

パネルディスカッションでは、今後、大学・国研・企業・行政など多様な組織との連携による「スーパーサイエンスシティ」構想の深化やスマートシティの取り組みが、防災や危機管理面でどのような革新をもたらすのか、意見が交わされた。