【ワシントン、北京時事】トランプ米政権が打ち出した相互関税の第2弾が9日、発動した。貿易赤字が大きい約60カ国・地域からの輸入品に対し、個別に追加関税を課す。一律10%の基本税率分は発動しており、今回で完全適用となる。日本への関税率は24%。物価上昇や貿易の停滞、市場混乱などで、米国や世界の景気が悪化するとの懸念が強まっている。
 相互関税への報復措置を打ち出した中国には、当初設定した34%に、さらに50%を上乗せした。すでに発動済みのものも合わせ、計104%の追加関税を課す。これに対し、中国は米国からの輸入品に課す追加関税の税率を10日から84%に引き上げると発表した。経済大国の米中が高関税をかけ合う事態となった。
 第2次世界大戦後の自由貿易体制が崩壊する転換点となる恐れがある。先行き不透明感から、世界の株式市場は不安定な動きを続けている。
 相互関税は、安全保障への脅威に対応する国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく措置。長年の巨額貿易赤字や製造業の海外流出を「非常事態」と位置付け、輸入コストを引き上げることで、製造業拠点の米国回帰を促す。
 グリア通商代表部(USTR)代表は、米上院委員会の公聴会で「例外や除外措置を設けるつもりはない」と説明した。日中以外では、欧州連合(EU)に20%、韓国に25%、インドに26%、ベトナムは46%を課す。
 米政権によると、米国から相互関税を課された70近くの国・地域が、関税を巡る交渉開始を求めており、トランプ氏は個別交渉に入るよう関係閣僚に指示した。
 レビット大統領報道官は8日の会見で、交渉では「すべての選択肢が検討対象になる」と述べ、幅広い分野が議題になるとの見方を示した。また、「他国が米国を必要としているほど、米国は他国を必要としていない」と断言。巨大な国内市場を武器に、交渉を優位に進めることに自信を示した。
 対日交渉はベセント財務長官とグリア氏が担当。日本の為替政策や農産物市場の開放、規制など非関税障壁の撤廃、経済安全保障分野での協力などが協議される見通しだ。 
〔写真説明〕パネルを掲げ、相互関税について発表するトランプ米大統領=2日、ワシントン(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)