災害から命を守れ ~市民・従業員のためのファーストレスポンダー教育~
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最終回 日本が目指すべき防災・危機管理の姿(2)
前回に引き続き、「日本が目指すべき防災・危機管理の姿」にフォーカスして筆者の思いを読者の皆様と共有したいと思う。 (知識・技術・装備) X チームワーク 東日本大震災からすでに6年が経過した今、我々はあの災害から何を学んで教訓としていけば良いのだろう。人間は大自然の力に逆らうことはできない。しかし、だからと言って災害を単なる悲劇としてそのまま受け入れていいということではない。人間が本来持っている適応能力を最大限に発揮し、未来の子供たちのために、しっかりと教訓を残していくことが私達に課せられた大きな責任ではないだろうか。そのためには、“教育と訓練”が必須であることはご理解頂けると思う。下の図をご覧頂きたい。 “教育と訓練”を定義する時は、常に総合的な視点を持って語る必要がある。
2017/07/11
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第10章 日本が目指すべき防災・危機管理の姿 (1)
10回に渡り連載してきたこのシリーズもいよいよ今回で最終章となる予定であったが、編集長からのご好意により、あと数回続けられることになったため、今回と次回は今までの総括という形で話を進めようと思う。この章では、筆者が考える民間目線での問題点を過去の連載シリーズと合わせてあぶりだすことで、これから日本が目指すべき防災・危機管理の姿に導いていきたい。
2017/07/06
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【第9章】 危険物/テロ災害対応 (2) (後編)
それでは一体、市民レベルではどのようにして危険物・テロ災害に備えればよいのだろう? まずはじめに読者の皆さんに認識して頂きたいのは「危険物・テロ災害から身を守り、生存することは可能だ」ということである。このことは自然災害へ備えることと同意義で是非、第1章の「災害準備編~本当に準備するべきことは!?~」を見直していただきたい。
2017/06/20
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【第9章】 危険物/テロ災害対応 (2)(前編)
前回の連載では“危険物/テロ災害(1)”として、危険物、テロの定義・種類とそれらの認識について解説した。今回の連載では一般市民や従業員が危険物災害やテロ災害に遭遇した際に、どのように物質を特定し、防護行動を取ればよいのかを中心に解説する。
2017/06/13
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【第8章】 危険物/テロ災害対応(1)(後編)
生物テロ(B災害)はウィルス、バクテリア、生物毒などの病原性微生物(バイオハザード)を意図的にばらまき、人を殺傷するものだ。生物兵器は炭ソ菌のように即効性があるものだけとは限らず、攻撃が仕掛けられてから数日あるいは数週間を経てからその症状が現れるケースのほうが多く、長期的または広範囲に影響を及ぼすものがあることから、高いリスクの兵器をして認識する必要がある。生物テロによる攻撃を受けると次のような徴候がある。
2017/06/07
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【第8章】 危険物/テロ災害対応(1)(前編)
前回の連載では市民レベルの捜索救助活動として、救助者の安全第一を考えた捜索救助活動に焦点を当て、正しい現場のサイズアップ(活動判断)方法や捜索救助活動を実施する上での引き際や技術について解説した。今回の連載は危険物災害やテロ災害についてだが、内容が多岐に渡るため2回に分けて寄稿する。まず第1回は、一般市民レベルでどのように危険物テロ災害を認識すればよいのかを中心に解説する。
2017/05/30
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【第7章】 市民レベルの捜索・救助活動 (後編)
さあ、いよいよ次の手順に従って捜索(検索)活動を始めてみよう。1) まず現場(建物内外)に到着したら、次のように要救助者へ声で知らせよう。「もし私の声が聞こえたら、こちらまで来てください!」もし誰かが来たら、その人からできるだけ詳細に現場の様子を聞きだすのだ。他に誰かいるのか? どこにいるのか? など。そして現場の状況に応じてその場で留まらせるか、避難させるかの指示を出す。その際は指示を受ける人の心理状態や様子をよく観察して、簡潔に短く分かり易い指示を出すように心がけたい。
2017/05/23
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【第7章】 市民レベルの捜索・救助活動(前編)
前回の連載では災害救護(2)として、現場での衛生管理、処置エリアの設定方法、要救護者の全身観察の手法と搬送方法について解説した。今回の連載では市民レベルの捜索・救助活動について解説する。前々回の連載で「自助の力と盲点」に関し説明したが、重要な部分なので改めて再度強調したい。
2017/05/16
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【第6章】 災害救護 2 (後編)
さて、災害現場にて要救助者に対するトリアージと応急処置を施した後、CFR(市民救助隊)は要救助者を安全な処置エリアまで搬送する(搬送方法については次項で説明)。処置エリアでは要救助者に対し再度「殺し屋」(気道閉塞・多量の出血・ショックの兆候・クラッシュシンドロームの兆候)を確認した上でさらなる全身観察を行う必要がある。全身観察を行う主な目的は以下の3つである。
2017/05/11
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【第6章】 災害救護 2 (前編)
さて、前回の連載では「災害救護1」として、”災害時特有の救護活動について解説した。平時における一般的な救急救命処置方法との大きな違いを示しながら、気道確保・止血・ショック・クラッシュシンドロームに対する処置、現場でのサイズアップ、市民レベルによる簡易トリアージの手法などについて触れた。今回の連載では前回の続編として、現場での衛生管理、処置エリアの設定方法、要救助者の全身観察の手法と搬送方法について解説していく。
2017/05/02
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【第5章】 災害救護 1(後編)
ショックとは血液の循環が悪く、体中の細胞へ十分な酸素と栄養が行き渡らない状態を指し、この状態が長引くと死に至ることがある。しかし、このショック症状は見逃しやすいので注意深く要救助者を観察する必要がある。
2017/04/25
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【第5章】 災害救護 1(前編)
読者の方もご存知だと思うが、あの震災では自助・共助により命が助かった割合はなんと95%にも上る。(下グラフ参照) 一体この数字から何が読み取れるのだろうか? 筆者はこの数字を“人間が本能的に持つ善の心がもたらした勇気ある行動の結果”だと思っている。つまり、一旦災害が発生し自分の命が助かった者は、好む・好まざるに関わらず、自発的に救助活動を始めるということである。しかしその側面では大変な悲劇を招きかねない危険が潜んでいる。
2017/04/18
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【第4章】 火災防護 (後編)
読者の皆様にも「サイズアップ」という言葉を聞いたことがある方は多いと思うが、今一度説明しよう。サイズアップとは現場の状況を評価し判断することである。プロのレスポンダー(災害対応にあたる人)が現場で行っているこのサイズアップのプロセスは当然一般市民レベルでも活用すべきもので、火災現場におけるサイズアップの9つのステップを紹介する。
2017/04/11
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【第4章】 火災防護 (前編)
米国ではCDC(米国疾病予防管理センター)の下部組織でNIOSH(通称ナイオッシュ/National Institute for Occupational Safety and Health:米国立労働安全衛生研究所)という労働災害の予防を目的とした研究・勧告を行う政府機関があり、そこでは火災現場で殉職した消防士の事故調査を教訓に「火の動態と特性」を理解することがいかに重要であるかを力説している。これは常備消防だけに限らず、消防団をはじめ、市民レベルでの消火隊にも広く教育・啓蒙されなければならない。
2017/04/05
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【第3章】 チームの安全を守るICS (後編)
CFRまたはCERTメンバーとして災害が発生した場合、どのようにその機動力を発揮するかが重要だ。事前計画が文書上で決められているだけで形骸化していては何もならない。第1章の災害準備編でも述べたように、まず自分自身の身を守り、家族を守り、家を守り、近隣住民を守ることを省略することはできない。
2017/03/27
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【第3章】 チームの安全を守るICS (前編)
さて、いよいよこの章から最終章まで、一気に一般市民または組織の従業員がファーストレスポンダー※1として公設のプロのレスポンダーが現場へ到着するまでの数時間から数日間を繋ぎ、災害現場において真の自助・共助を実践するための具体的なノウハウの部分に入っていく。
2017/03/21
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【第2章】 「災害心理学」について
一昨日は、あの忌まわしい東日本大震災から6年の歳月を迎えた日だった。この場をお借りして最愛のご家族やご友人を亡くされた方々に心より哀悼の意を捧げます。 筆者が長年任務に就いていた米軍を辞めるきっかけとなったのが、この大震災であると言っても決して過言ではない。ふと30数年に渡り米軍で受けてきた教育や訓練を、一人の日本人として日本へフィードバックすることによって何か貢献出来ることがあるのではないかという思いが芽生えた日でもあった。あの時に思った感覚は今でも鮮明に思い出すことが出来る。
2017/03/13
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【第1章】災害準備編~本当に準備するべきことは?!(後編)
そして、生き残った後に考えなければならない次のステップが避難生活である。今回の災害対策基本法等の一部を改正する法律案の中でも、このことは新たな項目として追記されている。
2017/03/06
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【第1章】 災害準備編~本当に準備するべきことは?!(前編)
2013年4月12日に災害対策基本法等の一部を改正する法律案が閣議決定された。改正法では多くの改善点が発見できるが、その中で特に注目したいのが、第1章総則の第2条の二にて、「国、地方公共団体及びその他の公共機関の適切な役割分担及び相互の連携協力を確保するとともに、これと併せて、住民一人ひとりが自ら行う防災活動及び自主防災組織その他の地域における多様な主体が自発的に行う防災活動を促進すること」と書き加えられた点である。
2017/02/27
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【序章】 災害発生から数日間を生き残るために
東日本大震災で浸水した仙台市 ( 出典:America's Navy http://www.navy.mil/ )我が国に大きな歴史的傷跡を残した2011年3月11日の東日本大震災から早くも6年が過ぎようとしている。
2017/02/20