2015/01/20
C+Bousai vol2
【検証 長野県神城断層地震の対応】
一方で、公設消防の手が回らない状況の中、住民が危険な状況の中で救助活動を行うことについては、今後、安全対策などについて再考していく必要がありそうだ。神城断層地震の教訓を、今後、いかに地区防災計画に生かしていくことができるのか。成果と課題を探った。
長野県警の発表によると、被害が大きかった白馬村神城(堀之内地区)では、26人が倒壊した民家の下敷きになるなどしたが、全員が救出された。多くが近隣住民の手助けによるものだった。
被災地に住む60代の女性は「住民がかけつけ、チェーンソーやジャッキを使って救出にあたった」と当時の状況を振り返る。
農村部ということもあり、農機具や山林整備に使う器具を持っている家が多かったことが幸いだったとも言えるが、近隣を知り、普段から助け合う「近助」が機能した防災のモデルケースであったことは確かだ。
その裏付けとも言えるのが、白馬村が4年前から作成している「災害時住民支え合いマップ」だ。災害時に自力避難が困難な高齢者や障害者の住宅を地図に落とし込み、誰が手助けするかを地域で決めて地域で共有するためのもの。
区より小さな組の単位で地図を作り、要支援者のいる家屋に赤い〇のマーク、支援する側に青い〇のマークをつけるなど、住民が助け合える仕組みを構築してきた。
白馬村は29の行政区に分かれている。地区ごとに「区長」を頂点としたピラミッド型の住民組織が築かれ、86世帯230人の堀之内地区では、地区の下に10世帯ほどを束ねる8人の組長が、さらに組長の下には補佐役もいる。
こうした組織単位で、マップの作成や更新を通じ、誰がどこにいるか普段から声をかけ合い、何かあったときも「あの家にはお年寄りがいる」「あの家には何人住んでいる」とすぐに分かる仕組みができていた。こうした備えが死者ゼロにつながったと、白馬社会福祉協議会の山岸俊幸事務局長は話す。
災害時住民支え合いマップは、長野県が2005年にひな形を示し、県が市町村に策定を促してきた。2014年3月末時点で、県内77市町村のうち、66市町村が取り組んでいる。白馬村では目標29地区中、堀之内地区を含む16地区が策定済みだ。
C+Bousai vol2の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
-
-
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方