2025/01/09
定例セミナーダイジェスト
キーワードで振り返る今年のリスクと2025年の課題
特別講演
防災庁構想を機に考える日本の危機管理の課題とこれから
危機管理白書2025発行記念セミナー 12月26日

「自然災害」を「社会災害」ととらえ事前対策を打て
リスク対策.com は防災・BCPの年間分析レポート「危機管理白書2025年版」の発行を機に、12月26日、東京・市ヶ谷で記念セミナーを開催した。
2024年に顕在化したリスクを振り返り2025年の対策を展望するとともに、防災DXの推進に向けた官民連携の取り組みや自治体の先進事例を紹介。また関西大学社会安全学部・社会安全研究センター長の河田惠昭氏が「防災庁構想を機に考える日本の危機管理の課題とこれから」と題して特別講演を行った。

河田氏は講演で、今後日本で起きる災害は純粋な天災ではなく、人災の要素を含む社会災害だと指摘。それらはさまざまな要因がからみ合うネットワーク構造を持った複合災害で、被害を軽減するには「何が起きるかを予見して事前対策を行うことが重要」と話した。
さまざまな要因によって災害の被害様相が変わることを、河田氏は「相転移」という熱力学の言葉で説明。相転移は温度が変わることで水が氷になる・水蒸気になるといった具合に、環境条件が変わることで物の位相が大きく移行する現象を指す。河田氏は、災害時に同様の現象が社会にも起きるとした。
一例として防災の日のポスターの標語が長い間『地震だ!火を消せ!』だったことをあげ「関東大震災の教訓から、火災がなければ都市の被害は拡大しないと考えられていた」と指摘。しかし「阪神・淡路大震災の直接死の大半は建物の倒壊による圧死で、火災による死者も建物の下敷きとなり避難路を断たれた者が多かった」といい「都市直下型の地震では古い建物が引き金となって『相転移』が起きることに気づかなかった、あるいは気づいても手を打たなかった。能登半島地震も同じだった」と述べた。
ほか、首都直下地震で東京電力管内の震度6弱以上のエリアが長期停電することでコンピューターネットワークが使えなくなる、病院の診療や処置に必要な設備が動かなくなるなどのシナリオを紹介。「そのとき社会の位相は大きく移り、被害様相は一変する。『そんなことは起きない』と目をつぶるのではなく、何が『相転移』を引き起こすのかを調べ、事前に対策をしないといけない。起きてから考えていたら失敗する」と強調した。
逆に災害時の「相転移」は社会現象である以上、それを予見して事前に手を打てば被害は軽減できると指摘。「レジリエンスといいながら、能登半島地震では、素早い立ち上がりに一番大事な高速道路が真っ先に断たれた。起きてからの回復力だけに目を奪われ、事前の想定と予防がずさんだった。災害は社会災害だと意識し『相転移』の原因を予見すれば事前対策ができる。予防力と回復力をペアで高めていかなければならない」と話した。
PRO会員(ライトは除く)のアーカイブ視聴はこちら。2025年3月31日まで。
- keyword
- 防災
- BCP
- サイバーセキュリティ
- ヒドゥンチャネル
- 防災庁
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方