キーワードで振り返る今年のリスクと2025年の課題
特別講演
防災庁構想を機に考える日本の危機管理の課題とこれから

危機管理白書2025発行記念セミナー 12月26日

12月26日、東京・市ヶ谷で危機管理白書2025発行記念セミナーを開催

「自然災害」を「社会災害」ととらえ事前対策を打て

リスク対策.com は防災・BCPの年間分析レポート「危機管理白書2025年版」の発行を機に、12月26日、東京・市ヶ谷で記念セミナーを開催した。

2024年に顕在化したリスクを振り返り2025年の対策を展望するとともに、防災DXの推進に向けた官民連携の取り組みや自治体の先進事例を紹介。また関西大学社会安全学部・社会安全研究センター長の河田惠昭氏が「防災庁構想を機に考える日本の危機管理の課題とこれから」と題して特別講演を行った。

特別講演を行う関西大学社会安全学部・社会安全研究センター長の河田惠昭氏

河田氏は講演で、今後日本で起きる災害は純粋な天災ではなく、人災の要素を含む社会災害だと指摘。それらはさまざまな要因がからみ合うネットワーク構造を持った複合災害で、被害を軽減するには「何が起きるかを予見して事前対策を行うことが重要」と話した。

さまざまな要因によって災害の被害様相が変わることを、河田氏は「相転移」という熱力学の言葉で説明。相転移は温度が変わることで水が氷になる・水蒸気になるといった具合に、環境条件が変わることで物の位相が大きく移行する現象を指す。河田氏は、災害時に同様の現象が社会にも起きるとした。

一例として防災の日のポスターの標語が長い間『地震だ!火を消せ!』だったことをあげ「関東大震災の教訓から、火災がなければ都市の被害は拡大しないと考えられていた」と指摘。しかし「阪神・淡路大震災の直接死の大半は建物の倒壊による圧死で、火災による死者も建物の下敷きとなり避難路を断たれた者が多かった」といい「都市直下型の地震では古い建物が引き金となって『相転移』が起きることに気づかなかった、あるいは気づいても手を打たなかった。能登半島地震も同じだった」と述べた。

ほか、首都直下地震で東京電力管内の震度6弱以上のエリアが長期停電することでコンピューターネットワークが使えなくなる、病院の診療や処置に必要な設備が動かなくなるなどのシナリオを紹介。「そのとき社会の位相は大きく移り、被害様相は一変する。『そんなことは起きない』と目をつぶるのではなく、何が『相転移』を引き起こすのかを調べ、事前に対策をしないといけない。起きてから考えていたら失敗する」と強調した。

逆に災害時の「相転移」は社会現象である以上、それを予見して事前に手を打てば被害は軽減できると指摘。「レジリエンスといいながら、能登半島地震では、素早い立ち上がりに一番大事な高速道路が真っ先に断たれた。起きてからの回復力だけに目を奪われ、事前の想定と予防がずさんだった。災害は社会災害だと意識し『相転移』の原因を予見すれば事前対策ができる。予防力と回復力をペアで高めていかなければならない」と話した。

PRO会員(ライトは除く)のアーカイブ視聴はこちら。2025年3月31日まで。