BCP担当者として優秀な人材とは(イメージ:写真AC)

BCPの計画と現実とのギャップを多くの企業に共通の「あるある」として紹介し、食い違いの原因と対処を考える本連載。第2章として「BCPの実効性、事業継続マネジメント、発生コスト」に焦点をあてています。今回は危機管理人材の育成・確保に潜む「あるある」を取り上げ、優秀なBCP人材とはどういう人かを考えます。

第2章
BCPの実効性、事業継続マネジメント、発生コストの「あるある」

(7)人材育成・確保

・優秀な人材をBC推進担当者としてアサインさせたい

「優秀な人材をBC推進担当者としてアサインさせたい」と、よく聞きます。

「優秀である」という表現は、なんともあいまいな表現ですが、いわゆる優秀な人とは、目的を理解し、取り組むべきことの全体感を把握し、すぐに用語や指示が通じ、結果を導くストーリーを描け、フットワークが軽く仕事は早く、周辺を巻き込むことができ、部門間調整ができ、時間を守り、必要に応じた軌道修正ができ、結果を出せる人をイメージします。

優秀な人材をBC推進担当者としてアサインさせたいとよく聞くが(イメージ:写真AC)

アサインさせたいと言われても、そんな人はどの部門でもほしいし、そんな人がいる部門はけっして手放したりしないでしょう。でも、もしそんな人が偶然BC推進担当者としてアサインでき、BCの推進をミッションとして与えたら、たちどころに成果を上げてうまくいくかもしれませんし、その逆もあるかもしれません。

定義があいまいな、いわゆる「優秀な人」を求めることが正解なのでしょうか。気になる点が二つあります。

その1、その人がいなくなったらどうする?

業務が属人化してほかの人が触れなくなってしまう可能性(イメージ:写真AC)

自分が担当から離れてもBCMが自律的にまわっていくような仕組みづくりまでできる「優秀な人」であればいいのかもしれませんが、多くの場合、BCMに関わる業務が「属人化した業務化」「ブラックボックス化」「聖域化」してしまい、プロセスや成果を評価できない状態や、困っていたとしても手を差し伸べられない状態になってしまう恐れがあります。

その2、優秀な人は必ずしも優秀なリーダーではない

スポーツの世界で名選手と名監督の話に例えられている通り、自分ができることは皆もできると思い込んでしまっていたり、自分でやった方がよい結果が出るからとか、メンバーのミスを許せないからとかで、仕事を任せられなかったりすることがあります。プレイヤーとしての能力の高さがマネジメント能力と必ずしもイコールにはならず、結果として組織のパフォーマンスが低いものになってしまう現象です。

プレイヤーとしての能力の高さが必ずしもマネジメント能力とイコールにならない可能性(イメージ:写真AC)

BCは、特定の個人がゴールを目指して突き進んでいく性質のものではありません。企業(組織)全体を動かしてこそのものです。安直に「優秀な人」という言葉でアサインすることには大きなリスクをともなうことを認識し、どのようにBCを推進したい(させたい)のかをしっかりイメージしてから、求めるべき人物像が「どういう点で優秀である人」かをはっきりさせる必要があると考えます。