【イスタンブール時事】アサド政権崩壊後のシリアで、過激派組織「イスラム国」(IS)の復活に対する懸念が強まっている。旧反体制派が首都ダマスカスなど国家の中枢部を制圧したものの、北部ではトルコが支援する武装組織とクルド人勢力の交戦が続き、ISの再興を抑え込んでいた状況が不安定化した。既にISが攻撃を強化した兆候も見られる。
 在英のシリア人権監視団は15日、アサド政権崩壊後、ISの仕業とみられる6回の攻撃で市民18人を含む70人が死亡したと伝えた。攻撃は砂漠地帯や油田などで発生。人権監視団は、旧政権軍の撤退などに伴って生じた「治安の空白」にISが乗じているようだと指摘した。
 ISはかつてシリアとイラクにまたがる地域を占拠したが、国際社会の軍事作戦で衰退。シリアでは、米国などが支援するクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)が主力を担った。米中央軍によると、SDFは今もシリア各地で計20カ所の収容施設を管理し、IS元戦闘員ら計9000人以上を拘束している。
 しかし、政権崩壊後、北部で親トルコの武装組織「シリア国民軍」(SNA)がSDFへの攻勢を強め、劣勢のSDFの掌握地域が縮小した。ISはその隙を突いた形だ。
 IS掃討でSDFを必要とする米国は、危機感を募らせている。ブリンケン米国務長官は北大西洋条約機構(NATO)の同盟国であるトルコを訪れ、「われわれは長年ISの排除と復活阻止に注力してきた。継続が不可欠だ」と訴えた。
 これに対しトルコは、SDFをはじめとするクルド系民兵組織を、トルコ国内の反政府武装組織クルド労働者党(PKK)と一体の「敵」と見なす。対クルド軍事作戦の手を緩める選択肢はなく、エルドアン大統領は「自国の安全のため、シリアで活動する全てのテロ組織に対し予防的措置を取る」と強硬な構えを崩さない。(了)

 

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