東京電力福島第1原発事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)の試験的取り出し作業がようやく完了した。回収装置の開発の遅れに加えて、作業開始直前に人為的ミスが判明するなど、度重なるトラブルに見舞われ、当初の予定からは3年遅れた。2051年までの廃炉を目指す政府と東電にとっては大きな一歩だが、約880トンあると推定されるデブリの本格的な取り出し方法はまだ検討段階にある。
 最初の延期発表は20年末で、新型コロナウイルスの感染拡大により、英国での回収装置開発が思うように進まなかった。コロナ禍の影響はその後も続き、採取方法の見直しなども響いた結果、計3回の延期を余儀なくされた。
 今年8月22日に取り出しに向けた準備作業を開始したところ、回収装置に取り付けたパイプ5本の並び順が誤っていたことが判明。小早川智明社長が経済産業相に「手順確認が不十分だった」と報告する事態となった。着手後の9月17日には装置のカメラが映らなくなり、交換作業のため約1カ月にわたり作業が中断した。
 こうしたトラブルなどを乗り越えてのデブリ採取だったが、今回取り出したのはわずか5ミリ大のかけらにすぎない。東電は30年代に3号機で本格的な取り出しを進めたい考えだが、その方法は検討が始まった段階だ。
 福島第1の廃炉作業などを支援する原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)は3月、空気中で取り出す「気中工法」と充填(じゅうてん)剤で固めてから取り出す「充填固化工法」を組み合わせ、具体的な手法の検討を始めるよう提言。東電が1~2年かけて具体化するとしているが、充填剤の開発はこれからで、放射性廃棄物が増えるデメリットも指摘されている。 
〔写真説明〕東京電力福島第1原発2号機=2019年2月、福島県大熊町

(ニュース提供元:時事通信社)