東北電力女川原発(宮城県)は複雑に入り組んだリアス式海岸が特徴の牡鹿半島に立地する。周辺は曲がりくねった狭い山道が多く、移動手段が限られた離島も点在。東日本大震災では避難路となった県道が複数区間で通行止めになっており、「もし事故が起きても逃げようがない」という住民もいる。
 県道路課によると、震災時は半島沿岸部を通る県道2本が地震による路面崩壊などで一部通行止めに。内陸部のもう一本も9カ所で土砂が崩れるなどし、孤立集落解消に10日ほど要した。
 県はその後、道路の高台移転やのり面の崩落対策などを実施。ただ、2022年に公表された新たな津波浸水想定では、最大クラスの地震により県道2本の計14区間が浸水する可能性があるとされた。県担当者は「この場合の対策は避難しかない。浸水域の周知が重要だ」と語る。
 原発の南東約2キロの石巻市寄磯浜地区では、避難道路は狭い市道が1本だけ。孤立した場合はヘリコプターや船での避難もあるが、原則的には原発付近を通って内陸部へ移動することになる。
 住民の渡辺幸敏さん(84)は「道路も整備されていない。再稼働はまだ早い」と語気を強める。近くに住む渡辺義美さん(79)も「逃げようがない」と不安を募らせ、「道路を広くしてもらいたい」と訴えた。
 半島周辺には、網地島(石巻市)など五つの島に400人余りが住む。石巻市や女川町が策定した重大事故時の避難計画では原則、船で避難した後、自治体が準備したバスなどで内陸部の避難所へ向かう。天候状況などによってはヘリも活用することになっている。
 このうち唯一、原発5キロ圏内(PAZ)に位置する出島(女川町)は1日3便の定期船が頼みの綱だったが、12月に半島につながる橋が開通する。地元区長の須田菊男さん(75)は「船は波が高ければ出せず、夜も危険だ。橋が架かれば避難はしやすくなる」と期待を寄せる。
 11年3月の地震から数日後、本土に向かおうとしたが、津波によるがれきが海一面に広がり航行できる状態ではなかったという。須田さんは電力の安定供給のため再稼働には賛成としつつ、「絶対に事故は起こさないでほしい」と話した。 
〔写真説明〕東日本大震災による地震や津波などで崩壊した牡鹿半島沿岸部を通る県道41号線(宮城県提供)
〔写真説明〕東北電力女川原発近くに住む渡辺義美さん(左)と渡辺幸敏さん=18日、宮城県石巻市

(ニュース提供元:時事通信社)