特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)の概要【前編】
特定受託事業者に係る取引の適正化

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2024/10/24
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2023(令和5)年4月に成立した「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下「フリーランス新法」)が、いよいよ本年11月1日から施行されます。
フリーランス新法の目的は、「我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、特定受託事業者に業務委託をする事業者について、特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講ずることにより、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与すること」(1条)とされています。
上記目的にも看て取ることができるように、フリーランス新法における主たる規制は「特定受託事業者に係る取引の適正化」(第2章)と「特定受託業務従事者の就業環境の整備」(第3章)との2つに大別することができます。そして、前者は独占禁止法・下請法といった経済法のような性格を持ち、後者は労働基準法といった労働法のような性格を持っているということができます。
本稿では、フリーランス新法のうち「特定受託事業者に係る取引の適正化」(第2章)の主要なポイントをご説明したいと思います。
「特定受託事業者に係る取引の適正化」に関する規制についてご説明するのに先立って、フリーランス新法における主な文言の定義について、ご説明します。主な文言の定義については、下表のようになります。
●フリーランス新法の主な文言の定義
「特定受託事業者」(1項)がいわゆるフリーランスを指しています。そして、その「特定受託事業者」に「業務委託」(3項)する事業者全般が「業務委託事業者」(5項)とされた上で、「業務委託事業者」のうち従業員を使用するなどしているものについて「特定業務委託事業者」(6項)とされています。
このようになっていますので、例えば、Aさんという「特定受託事業者」(フリーランス)が、B社という「特定業務委託事業者」から「業務委託」を受けて、その受託業務をCさんという「特定受託事業者」(フリーランス)に再委託する場合には、Aさんは「業務委託事業者」となります。つまり、Aさんは、B社との関係では「特定受託事業者」となり、Cさんとの関係では「業務委託事業者」となるということです。
フリーランス新法は、主として「特定受託事業者」と「特定業務委託事業者」との間の「業務委託」に係る取引について適用されるものですが、後述するように、「業務委託事業者」に課せられている義務もありますので、上記の場合のAさんのようなフリーランスが、同法上の義務を負う場合があることにも留意が必要です。
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