【カイロ時事】レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラのナンバー2、カセム師は15日に公開されたビデオ演説で、イスラエルへの攻撃能力を誇示した上で、同国に対し「(攻撃を防ぐ)解決策は停戦だ」と訴えた。停戦すれば、交渉を経て、避難を強いられているイスラエル住民が国境地帯に帰還できると述べた。イスラエル軍は住民帰還を掲げてレバノン南部に地上侵攻した。
 ヒズボラはこれまで、各国の停戦に向けた努力を歓迎するにとどめていたが、一歩踏み込んだ形だ。ただ、カセム師は、ヒズボラが「イスラエルに痛みを与える新たな方式」を採用したと強調。イスラエルの態度が変わらなければ徹底的に戦う姿勢も示した。
 イスラエル北部の訓練基地では13日、ヒズボラのドローン攻撃で兵士4人が死亡した。同国のネタニヤフ首相は14日、ヒズボラに対し「レバノン全土で容赦ない攻撃を続ける」と強調した。
 ネタニヤフ氏の発言に先立ち、イスラエル軍は14日、レバノン北部のキリスト教徒の多い村を空爆。同国保健省によると、少なくとも21人が死亡した。イスラエルは従来、ヒズボラの影響力が強くシーア派住民の多い南部や首都近郊への攻撃に重点を置いており、北部への攻撃は異例だ。
 一方、イスラエルのメディアは15日、前日に開かれたネタニヤフ氏と国防相らの会議で、イランへの報復方針が時期を含め合意されたと報じた。米紙ワシントン・ポスト(電子版)によると、ネタニヤフ氏はバイデン米大統領との9日の電話会談で、イランの軍事施設への攻撃を計画していると伝達。対象には核施設や石油施設が浮上していたが、ネタニヤフ氏は「より穏健な立場」を示したとされる。 
〔写真説明〕ドローン攻撃の現場を離れる救急車=13日、イスラエル北部ビンヤミナ近郊(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)