【エルサレム時事】イスラエル軍がレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラへの攻勢を強め、レバノン政府によれば、同国の人口の2割を超える約120万人が居住地を追われた。一部は内戦が続く隣国シリアに脱出。通信アプリを通じ時事通信の取材に応じた避難民は、疲弊し「私たちが平和に暮らすことをこの世界は望んでいない」と嘆いた。
 イスラエルとヒズボラは昨年10月から、主に互いの国境付近を狙い攻撃の応酬を繰り広げてきた。イスラエル軍は今年9月下旬にレバノンの首都ベイルート南郊などへの大規模空爆を開始し、同国南部へ地上侵攻。避難民が急増した。
 小型バス運転手のニザルさん(30)は「ベイルートでは何度も何度も大きな爆発音が響き、黒煙が立ち上っている」と話す。多くの避難民が押し寄せたことで家賃が高騰し、女性や子供を含め路上で寝泊まりしている人が大勢いるという。ニザルさんは、ベイルートと北部トリポリ間を小型バスで運行しているが、トリポリ行きは避難民でいっぱいだと説明した。
 レバノンには、2011年から内戦が続くシリアを逃れて来た人々が多数いる。そうした住民が安全を求め、今度はいまだ内戦下の祖国を目指している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、約22万人がシリアへ避難し、うち約7割がシリア人と推定されている。
 建設業のヌアイミさん(25)はシリア軍の徴兵から逃れるため、5年前にレバノンへ密入国。南部に移り住み、結婚して2人の子供を授かった。だが、イスラエル軍の攻撃で「また戦争が始まった」と落胆している。
 退避先のトリポリは避難民でごった返し、避難所はレバノン人が優先されて入れない。「家も何もない。どこに行けばいいんだ」。正規ルートでシリアへ戻ろうとすれば国境検問所で逮捕されるのは確実なため、密入国する方法を探っていると明かした。 
〔写真説明〕6日、レバノン東部の対シリア国境検問所で、イスラエル軍の爆撃を逃れてきた避難民(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)