【イスタンブール時事】イスラエル軍がレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラへの空爆を続ける中、各国はレバノンに滞在する自国民の退避準備に着手している。戦闘の激化で避難ルートが制限される恐れがあり、戦況を見極めながら対応を急ぐ。
 英国は24日、自国民退避も視野に入れた準備の一環として、兵士約700人をレバノンに近い地中海の島国キプロスに派遣すると発表。ヒーリー国防相は、備えは「万全だ」と強調した。レバノンには約1万人の英国人が滞在中とされる。
 米CNNテレビによると、米国も数十人規模の部隊をキプロスへ送り、全面衝突勃発の際に自国民を避難させる作戦を準備。フランスもヘリコプター揚陸艦やフリゲート艦をレバノン沖に待機させ、非常時に脱出させる方針だと報じられた。日本も航空自衛隊のC2輸送機2機をヨルダンとギリシャに派遣する。
 フィリピンは、イスラエルによる地上侵攻が始まれば自国民1万1000人を海路で強制避難させると明らかにした。トルコは自国籍だけでなく外国籍の滞在者のレバノン退避支援も検討しているとされる。
 一方、オーストラリアのウォン外相は「レバノンにいる豪州人は数が多く、政府に全員を支援する力はない」と指摘。商用便が運航しているうちに出国するよう滞在者に促した。
 イスラエル軍は2006年のレバノン地上侵攻の際、首都ベイルートの国際空港を空爆。キプロスでは海上から押し寄せた多数の避難者が保護された。今回の情勢悪化を受け、キプロスのフリストドゥリディス大統領はロイター通信に「欧州連合(EU)やその他の国々から(退避への協力)要請が来ている。道義的責任として役割を担う用意がある」と語った。 

(ニュース提供元:時事通信社)