前線の影響で猛烈な雨が降った石川県・能登半島北部では21日、「人や車が流された」などの通報が相次いで寄せられた。住宅被害やけが人の情報も多数あり、元日の能登半島地震で大きな被害が出た輪島市の住民は「復興は振り出しに戻った」とうなだれた。
 大雨特別警報が出された輪島市や珠洲市などを管轄する奥能登広域圏事務組合消防本部(輪島市)の担当者は「川が氾濫し、人や車が流されたという情報が複数寄せられた」と説明した。輪島市への道路は土砂災害で封鎖されたという情報もあり、孤立地区が複数あるとみられる。
 輪島市中心部では、市街地を流れる河原田川が氾濫し、仮設住宅に床上浸水などの被害が出た。河原田川近くに住む自営業男性(69)は「せっかくできた仮設住宅はどうなるのか。地震からの復興も振り出しに戻った」と途方に暮れた様子。「物資も1週間ほどは届かなくなるかもしれない」と不安そうに話した。
 同市宅田町の会社社長石橋賢良さん(70)は「家の前の道路は崖崩れで通れなくなったり、大雨で深さ1メートル、直径2メートルほどの穴が開いたりした」と証言。自宅は高台にあるといい、「元日の地震を受けて水やレトルト食品は備蓄しているが、身動きが取れない状態だ」と話した。
 県道の土砂崩れで孤立状態になった同市町野町曽々木地区の男性(72)は「地区の集会所には住民30人ほどが身を寄せているが、行方が分からない人もいる」と心配そうに話した。男性は「近くを流れる川の堤防も決壊した。携帯電話はほぼつながらず、外部とは無線通信Wi―Fi(ワイファイ)で何とか交信できている」と語った。 
〔写真説明〕道路が陥没して落ちた車=21日午後、石川県珠洲市

(ニュース提供元:時事通信社)