アメリカ、バングラデシュ、ケニア。これら3カ国に共通することは何でしょうか。それは、ここ1年以内に、デモ(抗議運動)に関連して死傷者が発生する事案が起きたことです。
アメリカでは、昨今のイスラエル・パレスチナ情勢に関連したデモが大学のキャンパスなど多くの場所で継続して行われています。バングラデシュでは、公務員の特別採用枠に関する決定をきっかけにデモが活発化、当時の首相が出国、政権が崩壊するに至りました。ケニアでは増税案の提出を受けて反政府抗議活動が行われ、治安部隊が催涙弾等を用いたと報じられています。
海外では政治や経済、社会問題等さまざまな理由を背景に暴力的なデモが起き得ます。その際、渡航者はどのように安全を確保し、円滑に業務を継続すればよいでしょうか。本稿では、7月から8月にかけて起きたバングラデシュのデモを例に検討します。
デモの背景・経緯
バングラデシュでは公務員の採用に関して、1971年の独立戦争に参加した兵士の家族に特別枠(自由戦士枠)が設けられていました。2018年、同国政府は特別枠の廃止を決定したものの、2024年6月、高等裁判所は同決定を違憲とする判断を示しました。
これに対し学生を中心とするデモが行われるようになり、この7月中旬にはデモ隊と治安部隊が衝突。7月15日~19日にかけて行われたデモでは少なくとも200人が死亡し、多くの野党関係者が当局に拘束されました。その後7月21日、最高裁判所が高等裁判所の決定を覆し、特別枠の大幅な削減を含む判断を示したところ、抗議活動は一時安定化の方向へと進みました。
しかしながら、今次デモは公務員の採用枠に関する抗議に留まらず、より広範な政治的要求へと発展しつつありました。活動は再度活発化、8月5日に行われた全国的なデモにおいては、およそ135人が死亡したと報じられています。
これらの動きを受け、ハシナ前首相は辞任を表明し、バングラデシュを出国しました。その後、デモ隊は首相公邸であるGanabhaban(ガナババン)へ押し入り、破壊行為に及んだと報じられる一方、陸軍の参謀総長は国民に対するテレビ演説を行い、暫定政府を設立することを発表しました。8月8日、バングラデシュ出身でノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス博士が率いる暫定政府が樹立されました。
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