8月に発表された南海トラフ地震の「臨時情報(巨大地震注意)」について、大きな揺れが想定される地域に住む住民の8割が認知したが、うち2割は特段の行動を取らなかったことが、東大大学院情報学環総合防災情報研究センターの調査で分かった。9月1日は「防災の日」で、国は日ごろからの備えの重要性を訴えている。
 臨時情報は8月8日、茨城から沖縄まで29都府県の707市町村を対象に初めて発表された。ただ、想定震源域周辺でプレート境界の状況に特段の変化は見られず、後発地震に備えた呼び掛けは1週間後の15日に終了した。
 調査は発表直後の9~11日、インターネットで行われ、全都道府県の9400人から回答を得た。臨時情報が発表された「防災対策推進地域」を含む28府県5600人とその他の19都道県3800人に分けて分析。東京都は臨時情報の対象が島しょ部だけのため後者に分類した。
 調査の結果、5600人のうち臨時情報(巨大地震注意)を「見聞きした」のは83.0%だった。ただ、その後に取った行動を複数回答で尋ねたところ、21.0%が「特に何も行動は取らなかった」と答え、認知率と行動の隔たりが浮き彫りになった。
 実際の行動としては、テレビなどからの情報収集を除くと、「水や食料などの備蓄確認」(19.7%)が最多で、「家族との連絡方法の確認」(9.2%)や「家具の転倒防止確認」(8.1%)などが続いた。「旅行や帰省などの予定変更」は2.1%だった。
 同センターの関谷直也教授は臨時情報について「注意の呼び掛けよりも『日常生活を送っても構わない』とした部分が強く受け取られてしまったのでは」と分析。「伝えるべきメッセージが曖昧だったことが問題だ。伝え方が難しいのは分かっていたはずなので、どのように発信するか、国はもう少し事前に考えておくべきだった」と話した。 
〔写真説明〕南海トラフ地震臨時情報について記者会見で説明する評価検討会の平田直会長=8月8日

(ニュース提供元:時事通信社)