2024/08/08
検証 南海トラフ地震臨時情報
8月8日午後4時42分ごろに起きた日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震を受け、気象庁は午後7時15分、南海トラフ地震など今後の巨大地震への注意を呼びかける「南海トラフ地震臨時情報」(巨大地震注意)を発表した。南海トラフ地震の想定震源域では大規模地震が発生する可能性が普段と比べて相対的に高まっているとして、日頃からの防災対策を見直すとともに、政府や自治体の呼びかけに応じた防災対応を取るよう呼びかけた。情報が発表されたのは2019年に運用が始まって以来初めて。
リスク対策.comでは、昨年2023年10月に、企業を対象に「南海トラフ地震臨時情報」についてどの程度理解し、対応を検討しているかなどを明らかにするため、アンケート調査を実施した。その結果、臨時情報の内容については概ね理解がされているものの、対応について検討したり、具体的な計画を策定している企業は一部にとどまることが明らかになった。
週末からは連休、盆休みに入る企業も多い。今年1月1日に発生した能登半島地震への対応に関するアンケート結果も踏まえ、企業が見直すべき対策を考察する。
2023年10月に実施した南海トラフ地震臨時情報に対するアンケートでは、「南海トラフ地震臨時情報の意味を理解しているか」を質問したところ、44.2%が「ある程度理解している」、17.3%が「具体的に内容を説明できる」と回答し(グラフ1)、おおむね理解はされているものの、具体的な対応計画については「 策定しない、予定もない」との回答が46.5%と半数近くを占めた(グラフ2)。
内閣府が令和3年にまとめた「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン第1版」によると、南海トラフ地震臨時情報(主に巨大地震警戒)に対して企業などに求められる対策としては、日頃からの地震への備えを再確認するなど警戒レベルを上げることを基本に、個々の状況に応じて適切な防災対応を実施したうえで、できる限り事業を継続することや、「住民事前避難地域」内での明らかに生命に危険が及ぶ活動等に対しては、それを回避する措置を実施すること――、などを挙げている。さらに、防災対応検討の前提となる諸条件から想定される影響を踏まえ、南海トラフ地震が突発的に発生した際のBCPを参考に、必要な事業を継続するための措置を検討するとともに、後発地震に備えた具体的な防災対応について検討が必要としている(表)。
これらを参考に、企業がどのような対策を、どの程度検討しているかを5段階で質問しところ、最も検討が進んでいる項目は「市町村が指定する事前避難対象地域について確認している」で、5段階評価の平均点が3.21。「臨時情報発表後の対策本部の設置タイミングや方法を検討している」が2.81、「南海トラフ地震臨時情報発表時に予想される企業活動への影響と対策を検討している」が2.75 と続いた(グラフ3)。逆に最も検討が進んでいないのが「臨時情報に応じた在庫の積み増しなどについて検討している」で、平均点2.12 になった。
南海トラフ地震臨時情報への対応における課題についても質問したところ、最も課題と感じられているのは「事前避難の体制整備など、行政の対策ができていない」ことで、5 段階評価(点数が小さいほど課題が大きい)で2.46。このほか「臨時情報発表時の社会的状況が予想できない」(2.57)、「具体的な対策事例が少なすぎる」(2.58)などについても、多くの企業が課題を感じていることが分かった(グラフ4)。
対応計画の内容
臨時情報への対応計画を策定していると回答した企業に、計画の概略を自由記述方式で聞いたところ、臨時情報の内容に応じて対策本部を立ち上げる、在宅勤務に変更する、早期帰宅をさせる、回線ルートを確保する、などの計画を検討していることが分かった。
主な計画概要は次の通り。
・ 臨時情報の発令に合わせた危機管理対策本部の設置
・ 対象地域の拠点従業員への注意喚起・臨時情報の伝達
・ 臨時情報「調査中」発令後、対象地域の拠点従業員へ1週間の在宅勤務と自宅待機指示
・ 臨時情報の内容に応じた会社待機/早期帰宅/在宅勤務の判断、指示
・ 臨時情報発令時における防災体制・事前対策の見直し
・ 臨時情報に応じた事前避難もしくは避難準備指示
・ 臨時情報に応じた事前の迂回ルートや非常用通信衛星回線の確保
・ 臨時情報レベルに応じた各部門の対応項目の整理
・ 警戒情報・注意情報・調査中が発表された場合の対応規程の整備
・ 津波被害が想定される拠点に対しての注意喚起
・ 南海トラフ地震臨時情報発信時の関係団体との連絡体制構築
・ 臨時情報に応じた対応シナリオと行動チェックリストの整理
・ 臨時情報発表後の、関係機関、取引先などの情報収集・分析の手順化
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