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カタカナ語の「ガバナンス」が新聞報道などでもよく出てくるようになった。原語(英語)を辞書で調べると、最初の訳語は「統治」である。語源のギリシャ語は「舵取り」の意味で、国の舵取りは統治だ。英国歴史で習った「国王は君臨すれども統治せず」が頭に浮かぶ。この時の国王は、英語があまり話せず、政治に関心のなかったドイツ人のジョージ1世。コミュニケーションが取れない国王が首相と議会に政治を任せっきりにしたことから、立憲君主制の始まりとなったと解説されている。

現代では、コーポレートガバナンス(企業統治)の意味でも使用される。企業の不正行為などのコンプライアンス(以下コンプラと略す)違反の原因として、企業のガバナンスが不全の観点から新聞などで使用されることも多い。

コンプラ違反・ガバナンス問題で、政府が今年有名大企業に行政処分を下した注目すべき2件のケースがある。一つは、国交省が7月31日付で日本を代表する超優良企業のトヨタ自動車に対し、道路運送車両法に基づき型式指定申請における不正行為が行われていたとして、「是正命令」を発出した。その不正行為とは、意図的な、試験車両の加工、虚偽記載、データ改ざん等と書かれている。同法に基づく是正命令は、同じトヨタグループの日野自動車、ダイハツ、豊田自動織機にも出されており、4社目となった。

もう一つは、金融庁が、1月25日付で損保業界を代表する損害保険会社グループの一つである損保ジャパンとSOMPOホールディングスに対して、保険業法に基づき業務改善命令を発出した。これらの事件を参考に、コンプラ態勢を本稿で考えてみたい。