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今年もさまざまな危機が私たちを取り巻き、社会や企業に多大な影響を与えました。自然災害、サイバー攻撃やシステム障害、不祥事、地政学的リスク—。特に自然災害に目を向ければ、防災庁という新しい方向性も打ち出されました。1年間を振り返るとともに、2025年に求められる対策を考えてみたいと思います。

以下は、危機管理白書2025年の巻頭に載せた記事です。
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まさかを予見し、またかを断て

1月1日の地震発生。想定外というのは、今や手垢まみれの言葉だが、多くの人が「まさか」と思ったはずだ。翌日のテレビに映し出された羽田空港で燃える飛行機の映像もまさかだった。さらに9月、地震により甚大な被害を受けたばかりの能登が、再び豪雨により痛ましい姿へと化した。一方、「またか」と思えたのが避難所の姿だ。雑魚寝どころか、食料も十分に行き届かない。この映像を今後、何度見なければいけないのか――。こうした中、新しい政権によって防災庁の設置に向けた動きが本格化し始めた。日本の災害対応がどう変わるのか。まさか、とまたか、は災害に限らずあらゆる危機管理に共通に当てはめられる。今こそ、日本の危機管理を根本的に変えなくてはならない。まさかを予見し、またかを断て!

「既知の既知」と「未知の未知」

「既知の既知」「既知の未知」、そして「未知の未知」。これは、2002年2月に、米国防総省の記者会見で、当時国防長官だったドナルド・ラムズフェルド氏が語ったとされる言葉だ。「私たちが知っていることを知っている既知の既知というものもあれば、知らないことがあることを知っている既知の未知というものもある。さらに私たちが知らないことすら知らない未知の未知というものも存在する。そして我が国や他の自由国家の歴史全体を見てみると、後者のカテゴリーの方が難しい傾向にある」。この発言は、後に「ラムズフェルド・マトリックス」というリスクマネジメントの分析に使われまで有名になった。

 

さて、1月1日の能登半島地震をはじめ、2024年に顕在化したリスクはどこに当てはまるのか。人口減少と高齢化が著しく進む能登地域を襲った災害は、今後、日本のどこでも起き得る。それどころか時間の経過とともに、さらに人口減少と高齢化は進行し、逆に気候変動により災害は脅威を増し、頻度も高くなることが予想される。手をこまねいている余裕はない。災害対応に一義的な責任を負う市町村は行政職員が足りず、予算も少なく、集落が進む膨大な地域を管轄しなくてはならない。基礎自治体だけに任せる災害対応はもはや限界を迎えている。ラムズフェルド氏は「後者のカテゴリー(未知の未知)の方が難しい傾向にある」と述べているが、実際には「既知の既知」であるにもかかわらず、対応ができないことが多いのではないか。