ケンカ交渉術は一般社会で普通に行われている(イメージ:写真AC)

まずはケンカ交渉術を識別する

交渉結果が部分最適で決着した場合、それがたとえ当方に有利な条件での決着だったとしても、長い目で見るとリスクが高まることは前稿まででご理解いただけたと思う。そうはいっても、一般社会でみなが全体最適を目指すという理想は実現困難で、空虚な妄想に近いといっても過言ではないだろう。

実際に、相手は自己の利益優先の部分最適を目指しているケースの方が多い。こういった場合、相手の要求は強いものになるだろうが、だからといって譲歩を前提にすると、その譲歩したポイントが相手の次のBATNAになり、さらに高い要求につながることが想像できるだろう。このサイクルに落ち込むと、負のスパイラルとしてなかなか抜け出せないのは必定である。

ということは、まずは相手がケンカ交渉術を駆使してくるかどうかを見極める必要が生まれる。相手が部分最適を目指すか、全体最適を共有できるか、そこを見極めることで対処が変わるからである。

ケンカ交渉術を駆使する相手に同じスタンスでのぞめば泥仕合になる(イメージ:写真AC)

最初に断っておくが、相手がケンカ交渉術を駆使してくるからといって、当方も同じスタンスでのぞんでいいといっているわけではない。むしろ、全体最適を目指すスタンスは1ミリも揺るがせてはならないと考える。ただ、実行のプロセスが異なるだろうし、全体最適が交渉決裂であるべきケースも生じるのである。そのために相手のスタンスを把握しておく必要があるのだ。

では、見極めるべきケンカ交渉術の特徴を下記に記す。

➊論点のすり替え
➋やっていないことをやったと決めつけての論法展開
➌論理の飛躍
➍質問返し
➎過剰反応
➏合法的脅し
➐極端な例を一般化した主張
➑仮装(偽装)の利益提示

こうやって文字化すると、少々危ない世界のように感じる向きもあるかもしれない。それこそ、反社会的な活動や詐欺まがいの危険性を感じるかもしれない。しかし、そのような特別なことではなく、一般社会で普通に行われていることだと認識してもらいたい。

現実社会では、言葉巧みに、穏やかな口調で上記のようなやり取りが行われているケースが散見されるのであり、それを当人が意識しないで使っている場合もある。そうしてリスクが増大していくのだから要注意なのだ。