株主総会決議を争うにはどのような法的手続きが必要なのか(イメージ:写真AC)

はじめに

定時株主総会が集中して開催されるとされる6月が終わりました。担当者だった方々は、ほっと一息をついていらっしゃるかもしれません。

定期株主総会が集中する6月が終了した(イメージ:写真AC)

一方、株主総会の開催に係る手続等で、残念ながらうまくいかなかったところがあり、株主総会決議が争われるかもしれないと不安に感じている方々もいらっしゃるかもしれません。また、株主として、株主総会の手続や内容に納得がいかないところがあり、株主総会決議を争いたいと考えている株主の方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、株主総会決議を争う訴えについて、ご説明したいと思います。なお、株主総会の意義、機能等については、前回の記事をお読みください。

3つの訴え

会社法は3つの訴えを用意(イメージ:写真AC)

会社法は、株主総会決議を争う訴えとして、株主総会決議不存在確認の訴え(830条1項。以下「不存在確認の訴え」)、株主総会決議無効確認の訴え(830条2項。以下「無効確認の訴え」)、株主総会決議取消しの訴え(831条1項。以下「取消しの訴え」)という3つの訴えを用意しています。

不存在確認の訴えと無効確認の訴えは、その名のとおり、訴えの類型のうち、確認の訴えといわれるものです。株主総会決議の不存在や無効については、当該訴えに拠らずとも主張できるものですが、政策的な観点から法定されています。このため、株主総会決議の不存在や無効を主張するのに、不存在確認の訴えや無効確認の訴えを利用するかは、当事者の判断に委ねられています。

これに対し、取消しの訴えは、訴えの類型のうち、形成の訴えといわれるものです。形成の訴えとは、形成原因(この場合には、決議取消事由)の存在を主張して、法律関係の変動をもたらす裁判を求めるもので、訴えを認容する判決により、初めて法律関係の変動が認められることになります。つまり、株主総会決議の取消しについては、この訴えに拠るしかなく、この点が、不存在確認の訴えや無効確認の訴えと異なるものです。