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サプライチェーン管理の効率化を目的にブロックチェーン技術を導入し、競争力を高めている企業があります。透明性、トレーサビリティ、信頼性などの観点から、DXの一環としても注目されています。今回はサプライチェーン管理におけるブロックチェーン技術について解説します。

【事例】サプライチェーン管理にブロックチェーン技術導入を検討

Aさんは製造業の購買担当者です。世界中のサプライヤーから部品や原材料を調達し、生産ラインが滞りなく稼働するようにすることがAさんの役割です。数年前までは、安定したサプライチェーンを築くことができていたのですが、近年、その状況は一変しました。

新型コロナウイルスのパンデミックで、Aさんの会社のサプライチェーンの脆弱性が浮き彫りになったのでした。Aさんの会社は中国からの部品供給に大きく依存しており、中国でロックダウンが発生した際には、部品が届かずに生産ラインが停止する事態に陥ってしまったことがありました。さらにパンデミック後も、地政学的リスクや自然災害が続き、それに伴う世界的な半導体不足は、Aさんの会社も深刻な影響をもたらしています。

ある日、Aさんは業界のカンファレンスに出席したところ、同業他社で業績が向上しているB社の購買担当者と話す機会がありました。その担当者とは旧知の間柄であり、AさんはB社の業績向上のヒントを得ようと話しかけたところ、「サプライチェーンの管理にブロックチェーン技術を導入したことだ」と教えてもらいました。

長年購買担当を行うAさんは、自社のサプライチェーンを効率的に管理するために、これまでもいろいろな方法を導入しようとしてきました。しかし、現実的にはかなり難しい課題も多く、例えばあるサプライチェーンからは、「各社に機密情報があるため、安全性を完璧に担保してくれないと共通のシステムには入れない」と言われたことがありました。

また、別の企業からは「契約や決済に各社が独自システムを利用しているので、全体での一元化は無理だろう」と言われてしまいました。それ以外にも「サプライチェーンの数が多く、そこでやり取りされる情報がバラバラである」「独自のシステムを導入しているので、とにかく他社とのシステム連携が出来ない」等の理由から、なかなかサプライチェーンの効率的な管理が出来ない現状があります。

Aさんはプロックチェーンについては多少の知識を持っていますが、その技術を使ってサプライチェーンを効率的に管理するイメージがわきません。そのことが具体的にどのように業績向上に寄与するのかが掴めないでいます。