経済産業省は、能登半島地震で被災した自治体と連携し、電力使用状況のデータを被災者の居住証明として活用する実証実験を7月にも始める方針を固めた。罹災(りさい)証明書の発行に必要な書類の代わりとして扱うほか、在宅避難する高齢者の見守りといった被災者支援に役立てる方向で検討。今月3日、参加する事業者の募集を開始した上で、石川県内などで導入したい考えだ。
 実証は年明けごろまで行い、来年2月には検証結果をまとめる方針。効果が確認されれば、自治体向けのマニュアルに盛り込み、今後の災害対策に役立てる。
 罹災証明書は、被災家屋の公費解体や生活再建支援金の支給などに必要となる。多くの自治体では、住民票記載住所と実際の居住地が異なる場合、公共料金請求書などの提出を求めているが、電力使用データを居住証明として認めることを検討する。
 また、自宅などで避難生活を送る高齢者を巡回して健康状態などを確認する際にも活用。データをチェックすることで在宅しているかどうかを把握し、支援の効率化を目指す。
 さらに、災害発生直後にデータを使って在宅の家屋を即座に割り出し、迅速な救出活動につなげることも想定。実証では、能登地震発生時のデータを使って救出の可否を検証する。
 実証には、通信機器を備え、電力会社が電気使用量を遠隔で自動計測できるスマートメーター(次世代電力計)を活用。同メーターでは契約者の氏名や住所、30分ごとや月ごとの電力使用量データが得られる。2020年6月に改正された電気事業法では、自治体などが災害時に住民の同意なしで電力会社にデータの提供を求められるとの規定が新設。ただ、実際には防災への活用例はほとんどなかった。 

(ニュース提供元:時事通信社)