能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県の4市町で、廃業を決めた商工業の事業所が100を超えることが、各市町の商工会議所などへの取材で分かった。1日で発生から5カ月。復興の遅れから人口流出が進み、事業再建を諦める業者が相次いでいる。
 各市町の商工会議所と商工会によると、5月27日までに少なくとも珠洲市で48、輪島市で38、能登町で16、穴水町で10の計112事業所が廃業を決めた。
 珠洲商工会議所は4月、533事業所を対象に調査を実施した。その結果、33事業所が廃業済み、15事業所が廃業予定で、休業も87事業所に上ることが判明。回答率は44%にとどまり、袖良暢事務局長は「実際の数字は倍近いのでは」と懸念する。
 廃業の主な理由は人口流出による市場の縮小で、袖事務局長は「店を建て直しても売り上げが戻るか分からず、迷った末に廃業した人もいる」と話す。
 穴水町商工会では会員の約7割に当たる224事業所が営業を再開したが、建設業などを除き売り上げは低迷している。同町の商店街で事務用品店を営む吉村扶佐司さん(76)は「2月に営業を再開したが、売り上げは震災前の約10分の1だ」と嘆く。
 同町の人口は4月末時点で250人以上減少し、7100人を切った。吉村さんは「少子化も進み、先の見通しが立たない。負の遺産は残したくない」と苦悩の色をにじませる。
 後継者不足も地域に共通の課題だ。能登町商工会の担当者は「後継ぎがおらず、地震を機にやめることにした人もかなりいた」と明かし、「先行きが不透明。今後も廃業は増えると思う」と不安を口にした。 
〔写真説明〕発生から5カ月となる能登半島地震で、建物が倒壊したままの商店街=5月29日、石川県穴水町

(ニュース提供元:時事通信社)