北海道・知床半島沖で起きた観光船「KAZU I(カズワン)」の沈没事故では、旅客船事業者の質の確保や救助体制への課題が浮き彫りとなった。国土交通省は法改正などで規制を厳格化したほか、海上保安庁も体制強化を進めている。
 国交省は事故を受け、66項目にわたる安全対策を2022年12月に策定。事業者への抜き打ち監査など半数以上は既に実施されている。今月1日からは改正海上運送法が一部施行。カズワンのような小型旅客船のみを運航する会社の事業許可を更新制とし、安全に関わる是正命令があった場合は更新期限を短縮するなど、要件を厳格化した。
 事故当時、現場周辺では強風や波浪注意報が発令され、地元の漁船は出航を取りやめたものの、死亡した船長=当時(54)=らが強行したことも問題視された。同省は船長に必要な特定操縦免許を取得する際の講習内容を拡充。天気図や雲の色から気象を判断する知識など、出航の可否を判断する能力を養い、資質を向上する狙いだ。斉藤鉄夫国交相は「対策は確実に進んでいる」と強調する。
 第1管区海上保安本部(小樽市)は、所属するヘリコプターの事故現場到着が遅れたことを受け、1機を追加配備。ヘリ救助を専門とする「機動救難士」9人も新たに配属した。同保安本部釧路航空基地の葭谷真志次長は「今までより迅速に現場に対応できるメリットがある」と話した。 
〔写真説明〕1機が追加配備され、3機体制になった第1管区海上保安本部釧路航空基地のヘリ=3月8日、北海道釧路市

(ニュース提供元:時事通信社)