サプリメントによる想定外の健康被害に向き合う
第5回 エスカレーション・ルールの重要性

鈴木 英夫
慶應義塾大学経済学部卒業。民族系石油会社で、法務部門、ロンドン支店長代行、本社財務課長など(東京・ロンドン)を務め、その後、外資系製薬会社で広報室長・内部監査室長などを務め、危機管理広報、リスクマネジメントを担当(大阪)。現在は、GRC研究所代表、リスクマネジメント・コンサルタント(兵庫)。リスクマネジメント協会研究員。
2024/04/01
ニュースから探るリスクマネジメントのABC
鈴木 英夫
慶應義塾大学経済学部卒業。民族系石油会社で、法務部門、ロンドン支店長代行、本社財務課長など(東京・ロンドン)を務め、その後、外資系製薬会社で広報室長・内部監査室長などを務め、危機管理広報、リスクマネジメントを担当(大阪)。現在は、GRC研究所代表、リスクマネジメント・コンサルタント(兵庫)。リスクマネジメント協会研究員。
小林製薬が製造した「紅麹(こうじ)」原料のサプリメントによる健康被害の問題を巡り、大阪市が27日、対象商品の廃棄に向け回収を命じる行政処分を出した。2人の死亡例が明らかになり、100人以上に入院が拡大。被害の全容が見通せず、影響の拡大を防ぐため行政が対応を迫られた。
企業がすでに自主回収を表明したなかで、行政が早期の回収を命じるのは異例だ。消費者が購入済みの問題のサプリを摂取しないよう注意を促す狙いがある。亀本保健主幹は「商品が手元にある場合、絶対に食べないようにしてください」と呼びかけた。
(日経、2024年3月28日)
製品に本来入っていない成分による健康被害は、医薬品であれ健康食品であれ、経営陣に苦渋の決断を迫るものである。本来入っていないはずの成分であるから、「被害を受けた消費者が、何か別の事由で健康を害した」可能性も否定できない。
しかしながら、健康被害が複数寄せられると決断の遅れが命取りになる。健康被害が2件だと赤信号なのか? 3件以上ないと偶然と判断すべきなのか? この見極めは極めて難しい。しかしながらである。健康被害が10件を超えると「あっという間に」100件に爆発的に増加することになりかねない。
小林製薬に最初の腎疾患の入院の症例報告が医師から入ったのは1月15日で、2月27日までに6人の入院事例を確認した。自主回収が3月22日にずれ込んだことについて、渡辺淳執行役員は「調査にかける人員が限られ、製品が原因で症状が起こったと特定できなかった」と説明している(産経新聞、2024年3月28日)。
この間、事実確認などの事由で1月15日から2月6日にトップに報告が行ったとされる間のずれはやむを得ないとしても、自主回収を公表したのはそこから1カ月半も遅れたことは事態を決定的に悪化させた。
2000年に起きた雪印乳業の「黄色ブドウ球菌の毒素に汚染された乳製品による集団食中毒の事例」は、危機管理担当者・経営者にとって貴重な教訓である。この事案では乳製品を加工販売した雪印の大阪工場の担当者が消費者から複数寄せられた「子供が下痢をした」などの問い合わせに対して「子供さんにはよくあること」と取り合わず、結果1万3000人に及ぶ被害拡大をもたらしてしまった。これも問い合わせが数件の内に、原料を加工した北海道の大樹工場に確認をすれば「冷凍貯蔵タンクが停電した」事実がすぐわかり、「販売中止・回収」へのアクションが起こせたはずである。
ニュースから探るリスクマネジメントのABCの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方