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■今回のニュース:
三菱電機では計197件の不正が確認された

三菱電機の品質不正を巡り、調査委員会が公表した最終報告書でも新たな問題が発覚した。製品試験を受託していた協力会社が「不正をやめたい」と伝えていたが、管理職は具体的な措置は講じず、訴えは放置された。問題として表面化していたにもかかわらず、約2カ月前まで続けられていたケースもあった。「あわよくば発覚は免れられる」「性能には影響ない」などとの不正軽視の姿勢も目立った。(日経新聞:2022年10月21日)

 

■リスクの視点:
品質不正は企業文化

品質に関する継続的な不正は企業文化に根づいている。これまでも三菱自動車工業や日野自動車などの例も報道されている。背景には「性能に実質的な問題がなければよい」などという正当化要因がある。

2022年10月20日に公表された三菱電機の調査委員会の調査報告書(第4報・最終報告)によれば、管理職の関与については、① 管理職が不正を自ら積極的に主導・指示・了解していた場合、②事後的に職制を通じて部下から相談・報告を受けたり、2016年度から 2018年度に実施された点検において部下から相談・報告を受けたものの、適切な是正措置を講じることができなかった場合等が指摘されている。

管理職の関与があった62 件のうち、上記①のケースは 54 件あった。最終報告では「管理職の関与があった事案の大部分において、管理職が不正を自ら積極的に主導・指示・了解して、部下に不正を行わせていた」と記載されている。

品質不正の発生原因としては以下7点が報告されている。

① 手続による品質の証明が徹底されておらず、『品質に実質的に問題がなければよい』との正当化(顧客説明の回避を含む)

②品質部門の脆弱

③ミドル・マネジメントの機能不全

④本部・コーポレートと現場との間の距離・断絶

⑤拠点単位の内向きな組織風土

⑥事業本部制の影響

⑦経営陣の決意の『本気度』に課題

 

さらに、多数の製作所において品質不正が発生した理由については次のように書かれている(抜粋して紹介)。

・『手続による品質の証明』という考え方が腹落ちしにくいことであり、納期逼迫等があると「性能に実質的に問題ない」との正当化の下で、手続軽視が起こりやすかった。

・ ISO やUL規格等の導入があっても、製品を(海外で)売るために形だけ資格があればよいという発想に陥りがちであり、『手続による品質の証明』が根付かなかった。

・多くの事案で、顧客説明の負担や手間から、顧客説明の回避があった。

・ 検査省略や試験条件変更等の多くの事案で、顧客に事前説明していれば、顧客の了解を得て、不正に至らずに済んだと思われる

 

 これらの要素は、他の会社でも考えられる。