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現在、「Nコン」と称される大会は、約30年前、合唱界の甲子園として知られ、日本最大の合唱コンクールだった。学生時代、私はこのNコンで金賞を受賞した強豪合唱部に所属していた。

変な顔をして歌うから、全校集会でお披露目しようものならクスクス同級生から笑われ、全国で一番をとっても学生カーストはいっこうに上がらないという面白悲しい思い出がある。

1年365日ほぼ休みがなく朝練と夜練があり、その辺の体育会系の部活より気合が入っていた。ボイストレーニングに至っては、外部からプロフェッショナルの先生をよんできて、厳しいトレーニングに部員がパタパタ倒れた。

精神が未熟な学生たちが、全国優勝を目標に掲げ狂気的に前進する中、歪な文化が醸成されていったのか、生意気な後輩といわれた私はたくさんの先輩に呼び出され、集団で注意を受けるようなこともあった。

そんなこともあんなことも今となってはすべて笑い話だが、現代なら問題になっているかもしれない。宝塚歌劇団に所属する劇団員が自死した事件をめぐって、開催された記者会見を見ながらそんな思いを馳せた。

宝塚歌劇団事件の詳細

2023年9月、宝塚歌劇団の劇団員が自死した。11月14日の記者会見では、劇団側は「団員に強い心理的負担がかかったことは否定できず、安全に対する注意義務を十分に果たしていなかった」と述べ、「いじめやハラスメントは確認できなかった」と発表。しかし、遺族側の弁護士はこれに反論し、「事実関係を再度検証すべき」と主張している。遺族の弁護士によれば、女優は劇団との業務委託契約に基づいて、政府が定める労災補償の基準を超える277時間以上の残業を行っていたとされる。

メンタルヘルスの課題と職場文化の重要性

宝塚歌劇団は1913年に設立され、一部でカルト的な人気を誇る。劇団は、志の高い若い女性たちにとって憧れの場所であり、彼女たちは厳格なヒエラルキーの中で活動している。

劇団員たちが経験するプレッシャーは、私が「Nコン」で経験したものとは比較にならない。しかし全国優勝を目指し、毎日のように厳しい練習に臨んでいたその過程で、時には体力的、精神的な限界を超えることもあった。しかし、その時はそれが普通だと思っていた。

才能を磨き、夢を追い求めるために、厳しい環境での努力を惜しまない若い女性たち。しかし、これらの圧力が時に過度になり、彼女たちのメンタルヘルスに悪影響を及ぼすこともあったと考える。

学生時代に経験したようなプレッシャーは、時には成長に必要なものであるとされる。しかしそれが過度になると、個人の健康や幸福に悪影響を与えることになる。特に宝塚歌劇団のような伝統ある組織では、そのプレッシャーは大きく、長時間労働や極度の精神的なストレスが常態化していることは想像に難くない。

今回の悲劇は、ヒエラルキーや厳しい指導の名の下に行われる、集団の中の「文化」の存在を浮き彫りにしたかもしれない。

多くの場合、このような「文化」は集団内部の者には気づきにくいものだ。しかし、「知らなかった」では済まされない。私たちは、時代に合わせてメンタルヘルスとハラスメントに対するリスク管理を徹底する必要がある。これには、私たち一人一人の価値観のアップデートが不可欠だ。