出典:storyset

最近、石油大手のエクソンモービルや急成長中のファストファッションブランド、シーインが、その環境への取り組みをめぐって批判を浴びています。これらの事例は、ESGコミュニケーションの難しさと重要性を改めて考えさせられる出来事と言えそうです。

そこで本稿では、世界的な大企業が直面している課題を通じて、リスク管理担当者が学ぶべき教訓を探ります。

参照元:CNN California sues ExxonMobil for alleged decades of deception around plastic recycling, in first-of-its-kind lawsuit
THE WALL STREET JOURNAL Shein Faces Italian Antitrust Scrutiny Over Environmental Claims

「リサイクル神話」の崩壊?エクソンモービルの苦境

米国の石油大手エクソンモービルは、カリフォルニア州から訴訟を起こされ、大きな注目を集めています。この訴訟の核心は、エクソンが半世紀にわたってプラスチックのリサイクルに関する誤解を意図的に広めてきたという主張です。

エクソンが市民を誤解させたとされる具体的な説明内容は、主に以下の点が挙げられます。

①プラスチックの再生利用に関する誤解を招く説明
数十年にわたってプラスチックの再生利用について、実際よりも容易で効果的であるかのような説明を続けてきたとされています。

②リサイクルの限界に関する情報の隠蔽
プラスチックのリサイクルには実際には多くの限界があるにもかかわらず、その点について故意に住民を誤解させてきたと指摘されています。

③「先端リサイクル」技術の過大宣伝
エクソンは、リサイクルが難しいプラスチックを熱分解によって燃料に再生する「先端リサイクル」技術を推進してきました。しかし、カリフォルニア州の調査によると、この技術の進展は実際には遅く、エクソンが市民をだましていることの表れだと指摘されています。

④あらゆるプラスチックがリサイクル可能という誤った認識
あらゆるプラスチックがリサイクル可能だと長年消費者に信じ込ませ、結果として使い捨てプラスチックの利用増加につながったと主張されています。

これらの説明内容により、エクソンは世界的なプラスチックごみ汚染を助長し、環境に深刻な影響を与えたとして訴訟の対象となっているのです。訴訟の目的は、プラスチック汚染によってカリフォルニア州が被った損害に対する民事制裁金と、被害緩和のための資金提供です。

これに対し、エクソンの広報担当者は、先端リサイクル技術は機能していること、そして、カリフォルニア州自体がリサイクルシステムの問題を是正できていないことと反論しています。

いずれにしても、今回の訴訟により、長年にわたって消費者を誤解させてきたという指摘により、エクソンの企業としての信頼性が大きく損なわれる可能性があるでしょう。環境問題に対する姿勢が問われることで、エクソンのブランドイメージが悪化し、消費者や投資家からの支持を失う恐れリスクが顕在化するかもしれません。

シーインの「グリーン」な主張に疑問符

一方、中国発のファストファッションブランド、シーインも最近、そのESGコミュニケーションをめぐる問題に直面しています。イタリア政府が同社の持続可能性に関する主張に疑問を呈しているのです。

主な問題点は以下の通りです。

①リサイクル可能性の誇張
シーインは自社製品のリサイクル可能性について誤解を招く主張をしているとされています。

②「グリーンファイバー」の使用に関する疑問
同社は「グリーンファイバー」の使用を強調していますが、その定義や環境への実際の貢献度が不明確だという指摘があります。

③温室効果ガス排出量の報告における矛盾
シーインの最新の持続可能性レポートにおいて、温室効果ガス排出量に関する記述に矛盾があるとされています。これは、同社のESG報告の信頼性全体に疑問を投げかける結果となっています。

今、ファストファッション業界は既に環境への悪影響が指摘されている中で、今回のシーインの問題はこれをさらに悪化させる可能性があります。つまり、同社は業界全体の問題の象徴として批判の的となるリスクを抱えているといえます。